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冷蔵庫に入れてはダメ 旬の里芋を長くおいしく保存 面倒な下ごしらえの悩みを解消する調理のコツも 栄養士が解説
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里芋は、日本で古くから親しまれてきた食材のひとつ。縄文時代にはすでに存在し、稲作よりも前からある作物ともいわれています。現代も、旬のおいしい時期を迎え、食卓に登場する機会も増えますが、ぬめりで皮がむきにくかったり、手がかゆくなったり、下ごしらえが手間だと敬遠している人もいるかもしれません。実は、里芋の調理は皮にポイントがあるようです。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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浅い切れ目を入れて皮ごと下ゆで
ねっとりとした食感がおいしい里芋。皮つきのものを購入してきたら、まず表面の土や汚れを、タワシなどを使って水でしっかり洗い落としましょう。
洗ったあと、すぐに皮をむこうとすると、水分が残っているためぬめりが出やすく、手が滑りやすくなり危険です。また、里芋の「シュウ酸カルシウム」という針状の結晶が原因で、手がかゆくなることもあるでしょう。
そこで、里芋は先に皮をむかず、皮ごと下ゆですることをおすすめします。洗った里芋の中央にぐるり一周、包丁で浅い切れ目を入れます。鍋に入れ、かぶるくらいの水を入れ火にかけ、ゆでて水気を切ります。または、皮に切り目を入れた里芋を耐熱容器に並べ、水を振りかけ、ふんわりとラップをして電子レンジ(600W)で2分~3分加熱します。いずれも目安は、里芋に竹串が通るくらいです。
粗熱が取れたら、キッチンペーパーに包んで持ち、指を滑らすようにすると、簡単に皮がむけます。シュウ酸カルシウムは加熱により分解されるので、手がかゆくなる心配もありません。
下ごしらえした里芋を、食べやすい大きさにカットして、だし汁、砂糖と火にかけ、さらにしょうゆを加えて煮ます。適度にぬめりが取れているので、味もしみ込みやすく、手早くおいしい煮っころがしに仕上がります。
保存する際は冷蔵?常温?
旬の土付きの里芋を保存する際は、土は洗い落とさずに保存するのが基本です。いったん洗うとカビが生えたり、表面が乾燥しやすくなったりする可能性があります。また、寒さに弱いので、冷蔵庫で保存すると、温度が低すぎて低温障害を起こしてしまいます。土付きのまま紙袋などで包んで、風通しの良い冷暗所で保管すると良いでしょう。
明るい場所で保存すると、里芋に葉緑体が作られて、切ったときに緑色に変色していることがあります。ジャガイモと違って、この緑色は毒性がないため、食べても問題はありません。同様に、里芋の芽も、ジャガイモの芽と違い毒性はないので食べられます。えぐみが強いので、気になる場合は取り除きましょう。
土付きの里芋は、一見わかりにくいですが、傷んでくると柔らかくなってきます。保存していた里芋を調理しようと手に取ってみたら、柔らかいと感じる場合は、傷んでいる可能性が高いので処分してください。
里芋のうれしい栄養素とは
里芋は、ぬめり成分ともいわれる食物繊維「ガラクタン」を含みます。ガラクタンは、血糖値の上昇をゆるやかにし、血中コレステロール値や血圧を調整する作用が期待されています。
また、体の水分調整をするために余分な塩分を体外に排出するカリウムが、ほかのイモ類と比べると多いのが特徴です。高血圧予防やむくみの解消に役立つでしょう。
ぬめりや皮むきなど、下ごしらえに手間がかかる印象の里芋ですが、コツを知っておくと扱いやすくなります。ほくほくねっとりとした煮っころがしをはじめ、汁物などの具材に、旬ならではの味わいを楽しむおかずの一品にぴったりです。
(Hint-Pot編集部、和漢 歩実)