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天ぷらを塩皿に直接つけるのはマナー違反? つゆの正しい使い方とは 意外に知らない食べ方の作法
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教えてくれた人:和漢 歩実

サクッと軽い食感と素材のうま味が際立つ天ぷら。とくに専門店のカウンター席で味わう揚げたては、家で食べる時とはまた違った魅力があります。しかし、いざ店でいただくとなると、意外と迷うのが塩や天つゆの使い方など、ちょっとした作法。うっかりマナー違反をしていることがあるかもしれません。意外に知らない天ぷらの作法について、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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塩は「つける」のではなく「ふりかける」
天ぷらを専門店などの外食先で注文すると、小皿などに盛った塩や、器に入った天つゆと一緒に提供されることが多いでしょう。揚げたての香りを引き立てるため、まずは塩で味わってみるのが定番とされています。
こうした場面で気をつけたいのが、塩のつけ方です。塩を使う際、天ぷらを皿に盛られた塩に直接つけるのは、失礼にあたるといわれています。皿の塩が汚れてしまうのと、塩のつき具合が一か所に偏ってしまい、せっかくの味わいを台無しにしてしまうのが理由です。
一方、塩を指でつまんで天ぷらにふりかけるのはマナー違反ではありません。もちろん食べる前に、手洗いやおしぼりで清潔にしておくのが前提ですが、ふりかけることで天ぷら全体に塩が行きわたるので、おいしく食べられ、皿の塩も汚れません。親指と人差し指で塩をつまんで、天ぷらの上からそっとふりかけます。
専門店では、天ぷらの味が引き立つように、塩にもこだわりを持っています。作り手に配慮するためにも、見た目もきれいに、良い状態で食べることを心がけましょう。
天つゆはつけすぎに気をつける
天つゆを使う際は、浸しすぎに注意してください。素材の味や衣のサクサク感を損なう上、箸先から滴がポタポタ垂れる「涙箸」となり、箸使いのNG行為になります。天つゆが入った器を手に持って、天ぷらをさっとくぐらせる程度が良いでしょう。
エビなどひとくちで食べ切れなかった残りを、天つゆに再度つける行為は、あまり好ましいとはいえません。つゆに二度づけはせず、そのまま素材の味を楽しみながら、食べ進めるのがスマートです。なお一度かみ切ったものを、皿などに戻すのはマナー違反になります。
最初のひとくちを天つゆで味わい、食べかけを皿に戻して塩で食べる……と言った食べ方は、家庭なら気になりませんが、専門店などの外食先では控えるようにしましょう。一度、箸で取ったものは、皿に戻さずにそのまま食べるのが基本のマナーとされています。
マナー違反となる行為とは
天ぷらの専門店、とくにカウンター席では、揚げたてを一番おいしい状態で味わえるのが大きな醍醐味です。提供されたら、速やかに味わいましょう。ついおしゃべりに夢中になったり、スマートフォンを操作していたりして、料理が出されているのになかなか箸をつけないのは失礼にあたります。
盛り合わせで提供されたときは、左手前から順番に食べ進めると良いでしょう。一般的に天ぷらの盛りつけは、最後までおいしさを感じられるように味の薄いものが手前、濃いものが奥に配置されています。自分の好きな素材から食べたいと、奥から取って盛りつけを崩してしまうのは好ましくありません。
ちょっとした作法を意識するだけで、おいしさはさらに引き立ちます。日本料理の代表のひとつ、天ぷらの味わいを存分に堪能したいですね。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾
