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ホウレン草をベーコンと炒めると「もったいない」といわれる驚きの理由 栄養士が解説
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教えてくれた人:和漢 歩実

冬に甘味が増しておいしくなるホウレン草。食卓に上がる機会も増えるでしょう。ベーコンと一緒に炒める手軽な定番メニューが人気な一方で、「食べ合わせが悪い」といわれることがあります。なぜNGといわれるのでしょうか。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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鉄やカルシウムが吸収されにくくなる?
ホウレン草とベーコンの組み合わせが良くないといわれる主な理由は、ベーコンに含まれているリン酸塩に、ホウレン草の鉄やカルシウムの吸収を妨げる作用があるためと考えられます。
原料が豚肉のベーコンは加工の際に、食感を良くしたり、水分を保持したりする目的で、リン酸塩という食品添加物を使うことが多いです。鉄やカルシウムと結びつきやすい性質を持ち、同時に摂取すると、それらの体内への吸収を妨げる可能性があることで知られています。
そのため、ベーコンとホウレン草を一緒に食べると、鉄やカルシウムの栄養メリットを逃してもったいないということが、組み合わせが良くないといわれる理由なのでしょう。
しかし実際のところ、過剰摂取しなければ、影響はほとんどないと考えられています。日常的な食卓で口にする量のホウレン草とベーコンの炒め物であれば、直接的にカルシウム不足や鉄不足につながるとはいえません。それでも気になる場合、リン酸塩はゆでると減らせるので、ベーコンを下ゆでしてから炒めると良いでしょう。
誤解のないよう補足すると、ホウレン草だけで、体に必要な鉄やカルシウムを摂取するものではありません。鉄やカルシウムの不足が気になる場合は、レバーや青魚、小魚類や乳製品、海藻類や大豆製品など、ほかの食品からもバランス良くとることを心がけてください。
ホウレン草の鉄はビタミンCやたんぱく質と一緒に
栄養のメリットを高めるために、ホウレン草と合わせたい具体的な食品として、次のものが挙げられます。ホウレン草の代表的な栄養素とともに紹介しましょう。
○鉄
ホウレン草に含まれる鉄は、100グラムあたり(生、冬採り、日本食品標準成分表・八訂増補2023年による)2.0ミリグラムと、野菜のなかではトップクラスです。ただし、非ヘム鉄という種類で、そのままでは体内に吸収されにくく、ビタミンCや動物性たんぱく質と一緒にとることで吸収されやすい性質があります。たとえばレモン汁をかけたり、パプリカなどビタミンCが多い野菜と合わせたりすると良いでしょう。肉や卵、缶詰のツナやサバなど、良質たんぱく質を含む食品と調理するのもおすすめです。
○カルシウム
ホウレン草100グラムあたり、カルシウムは49ミリグラム含まれています。同じ野菜であれば小松菜(170ミリグラム)のほうが多めですが、ホウレンン草にも比較的多く含まれています。効率良くとるには、魚やキノコ類などビタミンD、納豆や藻類などのビタミンKを含む食品と合わせると良いでしょう。
ホウレン草は、βカロテンが豊富な緑黄色野菜です。必要時にビタミンAに変わり、免疫機能を維持するのに役立ちます。βカロテンは、油と一緒にとると吸収率が高まります。寒くなるこれからがおいしい季節。ベーコンとの炒め物はもちろん、さまざまな具材と一緒に献立に取り入れたいですね。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾