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正直者がバカを見る? 「前に行った者勝ち」の空気漂うアメリカの整列マナー 日本人ママが日本を恋しく思う現状
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日本では、駅のホームで人が列を作り、順番に電車へ乗り込む光景が日常的に見られます。しかし、多くの外国人にとって、それは驚くべき光景なのだそうです。ハワイ生活12年になる主婦ライター・i-know(いのう)さんはアメリカで、日本の“当たり前”が通じない場面に何度も出合ってきたといいます。第94回は「列に並ばないアメリカ人」です。
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「約3分の1の人が並ばない」ことに驚き
日本旅行をしたハワイのロコ(地元民)に話を聞くと、駅で見かけた“ある光景”に驚いたという声が少なくありません。それは、ホームで電車を待つ人たちが自然と行列を作り、順番に車内へ入っていくという、日本では当たり前の光景です。
列を作って順番を守ることは、幼稚園や保育園の頃から教えられる、日本社会で生きていくうえで基本的なルールのひとつです。電車待ちやスーパーマーケットのレジなどで列に並ばず、割り込む人を見かけることは、日本ではそう多くありません。
もしそんな場面に出くわしたら、とても異質な人物に出会ったような気分で、しばらくモヤモヤする人も多いのではないでしょうか。
では、私が暮らすハワイはどうか? というと、列に並ばず割り込む人を見かけることは珍しくありません。
たとえば、会員制スーパーのコストコにて。コストコは一般的なスーパーよりもお客さんが多いので、開店前から入り口付近に多くの人が集まります。行列を作るようお店の人が促すことはありませんが、マナーの良いお客さんは入り口の左右2か所に分かれて、自然と列を作ります。その人数は、50~60人ほどになるのが常です。
しかし、行列に並ばず入り口の真正面に待機し、開店時間と同時に我先にと店内に入っていく人が、20人ぐらいいます。つまり、約3分の1の人が並ばないということです。これが日本なら、まず並ばない人はほとんどいませんし、並んでいない人が多い場合は、店員さんが声がけをして列に並ぶよう促すのではないかと思います。
「あんなに待ったのに、サインもらえなかった…」 ショックな出来事も
さらに先日、ハワイで開催されたゴルフの「ソニーオープン・イン・ハワイ」を、子連れで観戦したときのこと。試合後に選手からサインをもらえる「KIDS AUTOGRAPH ZONE(キッズ・オートグラフ・ゾーン)」という小さなスペースが設置されていました。
そこは、付き添いの大人すら入ることができない“キッズ優先”のエリア。「さすが、アメリカ。ドジャースの大谷翔平選手も子ども優先でサインをすると噂を聞くし、子どもへの配慮が行き届いているなぁ」と感心していました。
そして、お目当ての選手のサインをゲットしたい我が子は、その選手がプレーを終える30~40分前から待つことに。ところが、係の人が順番を整理することなく人を入れていったため、あとから来たキッズがどんどん前に進んで、良いポジションを陣取ってしまいました。その結果、我が子は選手の通り道から遠い、後方に押しやられてしまったのです。
結局、サインをもらうことはできず……。もちろん、プロゴルファーたちの本気のプレーを間近で観られたことへの感動はありましたが、我が子は「あんなに待ったのに、サインもらえなかった……」という悲しい気持ちで、ゴルフ場をあとにしました。
私は日本のゴルフツアーを観戦したことがありませんが、知人の話によると、大会によっては運営側が選手それぞれの列を作り、お目当ての選手の列に並ぶと、順番にサインがもらえるようです。日本では“当たり前”な光景でも、アメリカに住んでいると「日本のそういうところは素晴らしい!」と、改めて感じます。
コストコでもゴルフ観戦でも「前に行った者勝ち」といった空気に、在米12年が経っても慣れません。郷に入っては郷に従え――そう自分に言い聞かせつつも、日本人としてあり得ない光景を目にしては落ち込む……。それが、一見すると華やかそうに見える海外暮らしの、そうでもない現実です。
(i-know)

i-know(いのう)
大学卒業後、フリーランスライターに。お笑い雑誌やファッション誌で、著名人のインタビューを中心に活躍。34歳のとき日本のキャリアに一区切りをつけ、単身ニューヨークへ。その後、ハワイのロコ(地元民)と結婚し、現在は2人の子ども(8歳、6歳)をバイリンガルに育てるべく奮闘している。
