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「受け継ぐ人は現れるのだろうか」  イタリア人が抱いた不安…京都で出合った「日本人の真心や献身」を感じたアイテムとは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

イタリア人のガエターノ・ジュンタさん【写真:Hint-Pot編集部】
イタリア人のガエターノ・ジュンタさん【写真:Hint-Pot編集部】

 日本の精神性は、ときに言葉の壁を越え、遠く離れた異国からやってきた若者の人生観をも揺さぶることがあります。2025年の春、長年の夢を叶えて日本を訪れたイタリア人男性は、京都の片隅で忘れられない体験をしました。いったい、どんな瞬間だったのでしょうか。

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日本のアニメに魅了 29歳で叶えた「夢の日本旅行」

 イタリア在住のガエターノ・ジュンタさんは、日本のアニメや漫画に魅了されて育ちました。社会人になり、コツコツと資金を貯めると、2025年4月に初訪日を実現。彼女や友人と合流し、東京から広島、高野山、京都まで、17日間かけて日本文化を満喫しました。

 旅の終盤、京都の愛宕念仏寺を訪れたあとのことでした。小さなアンティークショップで、ふと足を止めたガエターノさん。店内にいたのは、静かに、そして真剣なまなざしで古い時計と向き合う年配の男性だったといいます。

 ガエターノさんはその職人の手つきに、一瞬で目を奪われました。そして、そこで1960年製の「セイコークラウン」を購入したのです。半世紀以上も前のものとは思えないほど、それは新品のような輝きを放っていました。

「その時計から伝わってきたのは、日本人の真心や献身、そして仕事の正確さだったんです」

「命を吹き込む」喜びと募る切実な不安

 その職人は、動かなくなった時計に再び命を吹き込み、使える状態に戻すことに何よりの生きがいと喜びを感じていると語ってくれたそうです。しかし、その穏やかな語り口の裏には、避けられない現実もにじんでいました。

「年齢とともに、細かい作業が難しくなってきている。これから先、以前のように多くのものを直していくことはできないだろう」

 その言葉を聞いた瞬間、ガエターノさんの心には感動とともに、ある種の寂しさと不安がこみ上げました。

「職人の情熱に触れて、深く考えさせられました。こういう職人がいなくなってしまうのではないか、受け継ぐ人は現れるのだろうかと、自問せずにはいられませんでした」

 京都の路地裏で手にしたヴィンテージの時計。それは単なる旅の土産ではなく、日本の職人が注いできた献身の証として、イタリアに帰国したガエターノさんの腕で今も正確な時を刻み続けています。

(Hint-Pot編集部)