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「絶対にやめてほしい」 イギリス人シェフが嫌がる、日本人がやりがちなNG食事マナーとは
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思わず見入ってしまった中華料理店のカップル
私が目撃した一番衝撃的な「シェアしない」場面は、ロンドンの中華料理店にいたカップルでした。その店はカジュアルすぎず高級すぎない、使い勝手の良い店ですが、テーブルクロスはかかっています。
ヨーロッパのほとんどの国では、テーブルクロスがあるかどうかで、その店の格(というか価格帯)がわかります。カジュアルな店はテーブルにクロスはなく、そのちょっと上のランクなら赤いチェックや柄物のクロスがかかっています。
高級になると、シワひとつない純白のリネンや綿のクロスになります。白くてもポリエステルだったりするとちょっと格下です。純白のリネンクロスの上にキャンドルなどがゆらめいていたら、これは確実にお高いレストランということになります。

話がそれました。その中華料理店では、ほかの客たちはみんな、いろいろな料理をシェアして楽しんでいました。中華料理店ですから、もちろんそれが正しい姿です。
ところが私が目撃したカップルは、ふたり用のテーブルに背筋を伸ばしてきちんと腰掛け、それぞれが、前菜、メイン、デザートをオーダーしていました。やがて料理が運ばれてくると、ウェイターにナイフとフォークを頼み(箸で食べるのが基本の店です)、自分の料理だけを上品に食べ始めたのです。
中華料理ですからシェアすることを前提に作られている一品の量はかなりのものです。それでもそのふたりは絶対に相手の料理に手を出すことなく、静かに自分の目の前の皿だけを平らげていました。
それが、日本人の私にはあまりにシュールで、最初から最後までガン見してしまったのでした(失礼でした)。だったら中華じゃなくて別のレストランに行けば良かったのにとか、よほど中華が食べたかったのかしらとか、大きなお世話的な妄想に悩まされたのは言うまでもありません。
日本のシェア文化は欧米人にはハードルが高かった
居酒屋で、テーブルに乗り切らないほどの料理をみんなでシェアして食べるという、日本の素晴らしい食習慣は、実は長い間彼らにとってはかなり抵抗感があるものでした。みんなで鍋をつつくというのもかなり嫌がられたものです。仲居さんが取り分ける鍋は大丈夫な人が多いので、自分や他人が口に入れる箸やフォークを同じ料理に入れるというのが生理的にダメだったみたいです。
だから、日本の割烹料理のように、向付から始まり、椀盛、焼物、八寸、煮物、揚物などが順番に、一人ひとりの器に盛られて供されるスタイルは、イギリス人をはじめとする欧米人には安心感があるのだと思います。
ちなみに、以前アメリカ人を会席料理に連れて行ったとき、最後のお食事(ごはん)まで食べたあとで「ところでメインはいつ出てくるの?」と聞かれてのけぞった経験がありますが。
最近はSNSで日本の食文化が全世界に拡散され大人気になっているせいか、日本の食べ方もかなり周知されてきました。居酒屋での頼み方や食べ方をわかっている欧米人も激増しています。ちょっとずついろいろな種類をたくさん味わう日本食文化の素晴らしい楽しみ方を、海外の人も知ってくれてうれしく思います。
(斎藤 理子)
斎藤 理子(さいとう・りこ)
出版社で雑誌編集に携わったあと、イギリス・ロンドンなど海外に長年在住し、世界中をめぐって各地の食文化を体験。帰国後は日本国内外の食材生産者から、ミシュラン三つ星レストランや街角の立ち飲み店まで、幅広い食の現場を取材・執筆している。主な著作に「イギリスを食べつくす」(主婦の友社刊)、「隣人たちのブリティッシュスタイル」(NHK出版刊)がある。また、「アル・ケッチァーノ」の奥田政行シェフによる連載記事を編集・監修した「田舎のリストランテ頑張る」(マガジンハウス刊)の編著者でもある。2011年には、イギリス政府観光庁よりメディアアワードを受賞。現在、やまがた特命観光・つや姫大使を務める。
