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「はっきり言って人権侵害」公共施設のモスキート音、規制はできない? 社会生活に影響も…当事者の苦悩

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム

「若者にしか聞こえない音」とされるモスキート音(写真はイメージ)【写真:写真AC】
「若者にしか聞こえない音」とされるモスキート音(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 非常に高い周波数の音で、ネズミ除けや防犯対策に使用される「モスキート音」。聞こえる人にとっては非常に不快な音である一方、一般的に年齢を重ねるにつれ聞こえづらくなるという特性があり、繁華街では実質的な若者除けとして用いられているところも少なくありません。ネット上では、このモスキート音を巡り「なんで許されているのか分からない、一方的な暴力装置でしかない」「若者排除目的で使うのは人権侵害にあたるのでは」など、過度な利用に物議の声が上がっています。過去には隣人トラブルから訴訟に発展した事例もあるモスキート音、法で規制することはできないのでしょうか。モスキート音に悩む当事者と、繁華街での利用実態を認めている渋谷区に、詳しい話を聞きました。

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繁華街では若者除けとして用いられている事例も

「都内は至るところで鳴っていて、駅の利用さえままならない。日々、音が鳴らない場所を迂回(うかい)した生活を余儀なくされています」

 渋谷区在住の34歳男性、gecko655(@gecko655)さんは、就職を機に渋谷に引っ越して以来、街中で鳴り響くモスキート音に日々悩まされているといいます。一般的には年齢を重ねるにつれて徐々に聞こえづらくなるとされていますが、「体質によって個人差も大きい。何歳になっても聞こえる人は聞こえる」と当事者の実感を口にします。

「周囲の人間にも聞いてみましたが、同じ30代でも人によって聞こえ方に違いがあるようで、自分のようにとても気になる人がいる反面、まったく聞こえないという人もいました。60代の親戚もまだ聞こえると話していて、聞こえやすい体質の人にとって、年齢はあまり関係ないのではないかと思います。自分が勤め先の会社で行ったアンケートでは、約1000人の社員のうち『自分も気になる』と回答があったのは3人。わずか0.3%でした」

 実際のところ、当事者にとってモスキート音はどれほどの苦痛を伴うものなのでしょうか。

「耳に指を突っ込んで、何とか耐えられるかどうか。あえて鳴っているところを通過する気にはなりません。渋谷駅でいうと、東京メトロのB7番出口が特にひどい。2019年11月の出口設置当初から、おそらく24時間鳴っていて、本当に近づけないのでわざわざ遠い出口を使っています。渋谷フクラスのバスターミナルもかなりの音響で、羽田行き、成田行きのバス利用は諦めています。東京駅の地下もひどく、ビル同士の境目の自動ドア付近ではほぼすべてで鳴っている。新幹線などで東京駅を利用する際は、必ず地上を移動しています」

 自分の勘違いや思い込みではないか。そう思ったgecko655さんは、高周波を測定できる音響アプリを使って、各地点の周波数を計測。実際に、モスキート音を強く感じるところでは、大音量の高周波が流れていることが確認できたそう。これまで測定した中での最大値は、東京メトロ北千住駅の4番出口で計測したという90デシベル。これは、一般的に電車が通過する際のガード下の音量に相当します。

 過去には、転職活動の際、オフィスビル周辺にモスキート音が流れていないかが大きな判断材料に。面接官に「不本意ですが、ビルのモスキート音が止められないのであれば辞退します」と伝えたところ、そのまま不合格となった経験もあると振り返ります。

 日常生活の深刻な影響から、2022年12月、gecko655さんは「区長への手紙」という問い合わせフォームを通じてモスキート音の利用実態を渋谷区に問い合わせ。担当の環境整備課から寄せられた返信では、MIYASHITA PARK周辺、東京メトロB7番出口付近、渋谷フクラス、西武百貨店渋谷店、渋谷スクランブルスクエアなどの各施設で、事業者からモスキート音を発生させていることが確認できたといいます。

 一方で、区からは「騒音対策につきましては、東京都の『都民の健康と安全を確保する環境に関する条例』に基づき規制をしております。しかしながら、高周波音(モスキート音)につきましては、現在規制基準がなく、区で対応することが困難です」という回答も。問い合わせ後に一時的に音が止まった施設がある一方、新しく建つビルにはどれも発生装置が設置されており、年々聞こえる場所が拡大しているといいます。

 モスキート音を巡る現状について、渋谷区環境整備課の担当者はHint-Potの取材に「『モスキート音』そのものを直接規制する法律や東京都条例はありません。騒音規制法には『モスキート音』『高周波音』という用語は出てきません」と回答。過去にモスキート音について苦情が寄せられた際、「事業者に対して音量を下げるよう指導を行った事例はある」とした一方で、モスキート音等の高周波音は、騒音規制法や環境確保条例で定める測定方法では測定値が小さく表示される傾向にあるといい、「規制基準に基づく判断が困難です」と対応の難しさを口にします。

「商業施設ならまだしも、公共の施設でこれだけモスキート音が流れている現状は、はっきり言って人権侵害だと思います。赤ちゃんが泣き止まない理由は、親が聞こえていないモスキート音ということもあるかもしれない。一般の人に聞こえない周波数なら、どれだけ大きな出力で大音量を響かせてもいいのでしょうか。騒音規制は周波数で範囲を限定せず、高音も含めて一定の規制を設けてほしい」とgecko655さん。マイノリティーという理由だけで排除されることのない社会の在り方が求められています。

(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム)