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子どもを親の夢をかなえる代理にしていませんか? 中高一貫校の教員が明かす“中学受験の悩めるリアル”

公開日:  /  更新日:

著者:真貝友香

「英語への焦りや不安は近年の中学受験に確実に影響しています」と現状を語る谷咲さん【写真:Hint-Pot編集部】
「英語への焦りや不安は近年の中学受験に確実に影響しています」と現状を語る谷咲さん【写真:Hint-Pot編集部】

 子どもに中学受験をさせるかどうかは、家族にとってはもちろん、子ども自身にとっても大きな決断です。「中学受験に向いてる子・向いてない子」(Gakken)を上梓し、教員として教壇に立つ谷咲さんは、中学受験には大きなメリット、陥りがちな危機の両面があると言います。過熱傾向が指摘される中学受験の背景にあるものを、谷さんに伺いました。(取材・文=真貝友香)

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燃え尽きて中学入学以降、全く勉強しなくなる子も

 ONETES(旧・首都圏模試センター)の発表によると、2024年の受験者数は5万2400人(前年比99.6%)で、受験率は18.12%と過去最高でした。続く2025年の中学受験者数は5万2300人(前年比99.8%)が過去2番目の高さを記録しています。少子化によって児童数が頭打ちとなっているため、「受験率=全児童に占める受験者の割合」はわずかに上昇しているという結果です。

 私立中高一貫校の専任教員として勤務する谷さんは、大学院生時代の講師経験を含めこれまで数千人以上の中高生を指導してきました。クラス担任として数多くの保護者と接してきた経験からも、長く続く中学受験の勢いには納得感があるようです。

「教員不足などの理由から、公立中学校でしっかりとした質の高い授業が受けられるのだろうか、発達に凸凹があるお子さんへの配慮は十分だろうかと懸念している親御さんの声をよく聞きます。また、小学校から英語が必修化したことも要因の一つで、小学生の時点で英語力の差が顕著に開いています。学生時代に英語が苦手だった親御さんは、子どもに英語で苦労してほしくないという思いも強く、“公教育の英語だけで十分だろうか? より手厚く英語を学べる、プログラムが充実している私立がいいのではないか?″と考える方が多いですね。そのほか、高校からの募集枠がなく、中学で受験しないと入学できない中高一貫校も近年増えています。選択肢があるうちに受験してしまおうというのは妥当な意見だなと感じました」

 大学受験のシステムは過去数十年で大きく変化し、親世代の学生時代の常識や戦略はもはや通用しなくなっています。そのため、子どもを大学付属の中高に通わせ、内部進学のルートを安全に確保したいと考える保護者も一定数いるそうです。中学受験の動機はさまざまですが、すでに高校生、大学生になった子どもの保護者と話すと、中学受験の裏側にあるものも見えてきたようです。

「中学合格に精いっぱいになりすぎて、中高大と続くその後の10年間の方が受験期よりも大事という、当たり前のことが見えていなかったという方がちらほらいたのが印象的でした。燃え尽き症候群のように、中学に入った途端全く勉強しなくなったという声も聞いたことがあります。中学受験が手段ではなく目的化してしまうケースは確実にありますね」

親の夢をかなえるための中学受験になっていないか?

 本来、中学受験や受験塾は、元々勉強が好きな子どもが知的好奇心を満たすために存在していたものであり、私立校もそのような子どもを受け入れてきたはず――。谷さんはそう考えます。しかし、中学受験は時代を経て様変わりしています。その現実を踏まえた上で、子どもが中学受験をすると決めたなら、何が大事になるのか。親に必要なものは、途中で「受験をやめる」判断ができるかどうかだと谷さんは語ります。

 お金も時間も費やしているのに模試の結果が思うように伸びない、目標や目的が見えなくなってしまっているのに「ここまでやってきたのだから、最後までやらなければ」という心理が働いて、やめる判断をできずにいる家庭も決して少なくはないと言います。

「塾通いに疲れてしまったお子さんは大抵、家で声がけしないと宿題ができない、声かけしてもできなくなるという事態に陥ります。そこで親御さんから『だから、塾のクラス分けテストの点がこんなに低いんじゃないか』『家で勉強していないんだから当然じゃないか』など責められてしまうんです。親御さんは塾の授業は見られないですし、面談を申し込んでも塾での様子を何もかも把握できるとは限りません。そうなると、塾から出される学習量と、お子さんの現時点の気持ちや能力のバランスを家で見るしかないのですが、不調が体に出たら個人的にはもう遅いと思います。原因不明の頭痛や腹痛に悩まされて、学校にはギリギリ行けるけど塾には行けなくて……と心療内科にも通った結果、塾を一回お休みしようと決めたら落ち着くという話も何度も聞きました。しかしながら、中学受験というものは、子どもの心や親子関係をめちゃくちゃにしてまですることなのかという疑問は絶えずあります」

 谷さんは「学びに対する前向きさや、自分で考えられる力は、中学受験で得られる強みです」とメリットを強調します。だからこそ志望校に受かることだけをゴールにしないでほしい、万が一行けなかったとしてもそれを失敗だと捉えないでほしいと訴えます。「お子さんがあなたの夢をかなえる代理になっていませんか?」と投げかける問いが心に残りました。

(真貝友香)