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現地葬儀中継で語られたフィリップ殿下の素顔 妻と家族を優先した人生 納得と屈託
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93年に渡英、ロンドン市内の出版社勤務の経験もあり、常に現地の話題や情報の最先端に身を置く英在住のライター・森昌利氏。「Hint-Pot」で多数の英王室記事を執筆している同氏が、フィリップ殿下の死去に寄せて自身の見解を綴った。ギリシャ王子の子として生まれ、歴史の波に翻弄された少年時代。そして、30歳から歩んだ王配(君主の配偶者)としての人生。殿下の生涯を見事に象徴した厳かな葬儀を通じて見えたものとは?
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厳かな葬儀は殿下の生涯を見事に象徴していた
今月9日に死去したエディンバラ公フィリップ殿下の葬儀が、先週土曜日の4月17日に執り行われた。
不安定な天候で知られる英国の春としては、驚くような青空が広がり、まるで天が99歳王配の大往生を祝福しているような一日となった。
英国内では1月から始まった3度目のロックダウン解除が段階的に進んでいるものの、コロナ禍のルールは今も残っている。本来なら沿道を隙間なく埋めるであろう群衆の姿はなく、選ばれた30人の親族だけが参列するこじんまりとした葬儀が行われた。
もちろんこの規模はパンデミックの影響だ。しかし、そんな慎ましい葬儀となったことも、英国君主であり、英連邦に君臨する女王である妻の陰に潜まなければならなかった、王配としての生涯を象徴するように見えた。
現地の特別番組で語られた殿下の人柄とは
BBCは葬儀が始まる2時間半前の午後12時30分から現地中継を始めていた。スタジオにはフィリップ殿下の生前の素顔を知るゲストが次々と登場。在りし日の殿下の姿を語った。
公共の電波を通じてさまざまな話が流れてきた中、最も強く浮かび上がってくるフィリップ殿下の人物像は「堅苦しいことが嫌いで、ざっくばらんな性格」というものだった。
個人的に一番印象的だったのは、直近10年間の警護をしたスタッフが語ったエピソード。秘書を通さず、自ら電話をかけてきて直接用件を伝えるという話だ。
「妻は殿下が直接電話をしてくることにびっくりして『向こうには見えないよ』と私が言っているのに、カーテシー(片膝を曲げてお辞儀をするヨーロッパの伝統的な女性の挨拶)をしました。息子(が電話を取った時に)は『パブの人から電話だよ』と私に言ってきました。英国中に『デューク・オブ・エディンバラ』という名のパブがありますからね」
こんな話を聞くと、形式ばったことが嫌いで、何でも自分で片付けてしまいたがるような“せっかち”な性格も見え隠れして面白い。