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秋イワシの鮮度どう見分ける? カルシウム摂取や脳の活性化に関する栄養素も豊富
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教えてくれた人:和漢 歩実
大群「サーディンラン」を作り、回遊するイワシ。まとめて捕獲できるため、世界各地で食用魚として欠かせない存在です。日本近海では一年中獲れますが、秋に捕獲されるイワシは寒い冬に向けて脂がのっているためおいしいと言われています。そして、10月4日は「1(イ)0(ワ)4(シ)」の語呂合わせで「イワシの日」(1985年、大阪府多獲性魚有効利用検討会が制定)。意外と知らないイワシの豆知識を、栄養士の和漢歩実さんに伺いました。
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「鰯」の語源は? 寒さに備えて脂を蓄える秋も美味
イワシの漢字は「鰯」で“魚へんに弱い”と書きます。語源については諸説ありますが、陸に揚げるとすぐに弱ってしまうため「ヨワシ」と呼ばれたのが「イワシ」になったとも言われています。
鮮度の落ちるスピードが早く、傷むと悪臭を放つこともあり、平安時代の貴族たちからは「口にするものではない」とされていたようです。しかし、紫式部がこっそり焼いて食べるほど大好物だったという逸話から、イワシが「むらさき」と呼ばれていた説も。また、和泉式部もイワシ好きだったと伝えられるなど、そのおいしさは広く認識されていました。
地域差がありますが、ほぼ年中獲れることから旬は長めです。脂を蓄え始める6月頃のイワシを「入梅イワシ」と呼ぶ一方、寒さに備え始める今の時期のイワシも美味。秋の空に現れる「イワシ雲」を“イワシ大漁の兆し”として見ていたという話もあります。
また、現在の日本で最も多く獲れる魚でもあります。農林水産省の漁獲統計によると、1988年には年間の漁獲量が何と450万トン近く。しかし、2000年前後から急激に落ち込み、2005年には3万トンを下回ったため「幻の魚になる」と言われたことも。それからここ10年ほどで持ち直し、2020年には約70万トンになりました。
日本で獲れるイワシは主に3種類 加工品の数も豊富
日本で獲れるイワシは次の3種類です。主な加工品の種類と併せてご紹介しましょう。
○ウルメイワシ
目が大きく潤んで見えるのが特徴。体が丸く脂が少ないため、生食よりも干物として食されます。
○マイワシ
黒の点が体に7つ以上並ぶことから「七つ星」とも呼ばれます。一般的に体長10センチ前後のものは丸干しにして「めざし」に。また、加工品にも用いられます。10センチ以上は鮮魚として店頭に並び、塩焼きやフライ、たたき、つみれなどに最適です。
○カタクチイワシ
下アゴが小さく上アゴしかないように見えるのが特徴。稚魚はたたみイワシに、成魚は干物などに加工します。豊作を願ってお正月に食べる田作りの材料としてもおなじみです。シコ、セグロの別名も。
【イワシの主な加工品】
アンチョビ:小さめのものを3枚におろして塩漬けにし、発酵熟成させてオリーブ油に漬けたもの
オイルサーディン:頭とシッポを落として油で煮込み缶詰にしたもの
煮干し:食塩水で茹でた後に乾燥させたもの(3センチ以下の体長の煮干しは「ちりめん」と呼ばれる)
シラス干し:稚魚を食塩水で茹でて乾燥させたもの