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きのこの栄養成分とは? おなじみの5種類を徹底比較! 冷凍保存で旨味アップ
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教えてくれた人:和漢 歩実
古くよりきのこは“森の恵み”として日本人に親しまれてきました。栽培技術の進歩に伴い通年で手に入るようになりましたが、この時期は旬の味覚として楽しみたいですね。種類はシメジやマイタケ、エリンギなど形や食感もさまざま。なめたけでおなじみのエノキは軸までおいしく食べられるそうです。各きのこの栄養価や下ごしらえのコツを栄養士の和漢歩実さんに伺いました。
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きのこは「野菜」にあらず 糸状の菌糸が集まった「菌類」の仲間
多くのスーパーマーケットでは、野菜売り場に並んでいるきのこ類。しかし植物ではなく、微生物の真菌類が作る糸状の菌糸が集まった「菌類」の仲間です。
水分が多く、成分は野菜に似ているのですが、ビタミンCを含まないのが大きな違いです。エネルギー量は低く低カロリーで、ビタミンD、食物繊維やビタミンB類が豊富。ヘルシーな食材として注目されています。
林野庁によると、日本では現在4000~5000種類ものきのこが存在していると言われています。しかし正確な数は不明なままで、このうち食用とされているのはおよそ100種類。毒きのことして分かっているものは200種類超ですが、他の大半については食毒が不明のままです。
きのこに含まれる栄養成分は? おなじみの5種類を解説
未知の部分も多いきのこですが、ここでは、その中から店頭でよく見かける5種類をピックアップして順に解説します。
それぞれの特徴と主な栄養素、さらに調理のポイントも紹介します。
○エノキ
国内のきのこ類で生産量が最も多いエノキは、香りが少なくクセがないので、他の食材とも相性抜群です。白くて細長い栽培ものが多いですが、茶褐色の「ブラウンえのき」は歯応えが良く風味があります。
栄養素では、疲労回復で注目されるビタミンB1の含有量がきのこの中でもトップクラス。しょうゆで味付けした瓶詰めの「なめたけ」をごはんと一緒に食べると、エノキのビタミンB1が白米の糖質をエネルギーに変える働きがスムーズになります。
購入の際は、軸が密に重なり、かさが開き切ってないものを選びましょう。切った時にばらけるのが気になる時は、袋のまま切ると便利。石づきを取った軸の部分は食べられます。輪切りのままフライパンで両面をじっくり焼き、しょうゆや焼肉のタレなどで味付けすると簡単です。コリコリとした独特の食感が楽しめますよ。
○マイタケ
マイタケはかさの肉質が薄い分、歯切れが良いです。東北や北海道で採れる天然のものが高価なことでも知られています。
豊富に含まれるエルゴステロールは紫外線に当たるとビタミンDに変わり、骨や歯の代謝に一役買います。食物繊維の一つβグルカンは、血糖値の上昇抑制や免疫力サポートに関係するとされています。
選び方のポイントは、かさが肉厚で色が濃く、軸が白くてハリがあるもの。ほぼ捨てるところがなく食べられます。軸を触って硬い部分がある場合はその部分だけ切り落とすと良いでしょう。手で割いた方が、味がしみ込みやすいです。
プロテアーゼというタンパク質分解酵素を含むので、肉と一緒に漬け込んで調理すると、肉のタンパク質を分解してくれるのでやわらかく仕上がりますよ。
○エリンギ
エリンギはヒラタケ類に分類されます。香りは少なく淡泊な味わいですが、歯応えが良く、マツタケに似た食感です。きのこ類の中では日持ちが良く、他のきのこ類と比べると、食物繊維や三大栄養素の代謝に関係するナイアシン、ビタミンB群の一つ葉酸が比較的多いのが特徴です。
購入の際は、かさが開きすぎ、軸が太くて弾力があり、白いものを。繊維と平行に縦に切るのが一般的ですが、やわらかい食感を楽しみたい時は繊維と垂直に横に切りましょう。
○シメジ
シメジ類には「ホンシメジ」「ハタケシメジ」「ブナシメジ」があります。一般に市販されているのは「ブナシメジ」です。脂質の代謝をサポートするビタミンB2が多く、活性酸素の減少や免疫力アップに関わる成分も含まれていると言われています。
「香りマツタケ、味シメジ」という言葉がありますが、その通り旨味成分が多く、味わい深いきのこです。選ぶ時は、かさが小さく黒褐色で、軸が太くて短めのものが良いでしょう。石づきを取り除いて手でほぐすだけで調理できます。
○シイタケ
栽培方法には、原木栽培と菌床栽培の2種類があり、現代では市場に出回る大部分は菌床のもの。食物繊維を始め、カリウムや紫外線に当たるとビタミンDに変わるエルゴステロールが多く含まれています。干しシイタケも美味。旨味成分のグアニル酸も豊富で「だし」に使われます。
生シイタケは、かさ部分は巻き込みが強くて肉厚、軸部分は太くて短い方がおいしいと言われています。石づき部分を切ったら、軸も食べると良いでしょう。
きのこ類は冷凍保存で旨味がアップ カットしてから保存袋に
きのこ類は冷凍すると細胞が壊れ、酵素が働いて旨味成分を増やすと言われています。この成分がグアニル酸です。紫外線に当てて乾燥させたり、冷凍させたりすることで増えます。保存する際は、あらかじめカットして、冷凍用の保存袋に入れて密封し、空気を抜いて冷凍庫に入れましょう。
マイタケやシイタケなど香りの良いきのこは、シンプルに焼いて塩で食べるなど淡泊な味付けが向いています。一方でエノキタケやエリンギなど香りの少ないきのこは、肉や油脂と一緒に調理するとおいしいです。
きのこは、それぞれの香りや味、歯応え、舌触りなど食感を楽しむ食品。これからの季節、いろいろな種類のきのこを鍋料理に入れて味わうのも良いですね。
栄養満点のきのこ 食感や旨味、香りも味わって
約4000~5000種類あるとされるきのこ。食用きのこは100種類程度と言われていますが、今回はその中から手軽に購入できる5種類を紹介しました。きのこは、それぞれの香りや味、歯応え、舌触りなど食感を楽しむ食品。これからの季節は、いろいろな種類のきのこを鍋料理に入れて味わうのも良いですね。今回ご紹介したきのこの選び方や調理・保存方法を参考に、それぞれの特徴を生かして、さまざまな料理で使ってみてくださいね。旨味たっぷりのきのこを味わいましょう。
【参考】
おいしいきのこ図鑑(農林水産省)
「新食品成分表FOODS021」(とうほう出版)
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾