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スピードスケート王国オランダ 圧倒的選手層はなぜ生まれた? 現地で見た強さの秘訣
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高木美帆選手らの活躍で、日本でも連日大きな注目を集めた北京冬季五輪のスピードスケート。同競技で“王国”と称されるオランダが、今大会も圧倒的な強さを見せました。競技力の高さを誇る同国において、スケートとは一体どのような存在なのでしょうか。また、強くなった経緯とは。現地在住ライターの中田徹さんに、オランダのスケート事情について教えていただきました。(高木選手の高は「はしごだか」の「高」)
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オランダ人指導者の台頭 負けた時も感じる底力
北京冬季五輪で17個のメダルを獲得したオランダ。14年ソチ大会の24個には遠く及ばないものの、前回の平昌大会で獲得した20個に次ぐ数字になりました。
冬季五輪でのオランダの活躍を支える競技はスピードスケート。特に中長距離の強さは圧倒的で、男女合わせて8競技で9個のメダルを獲得しました(金5・銀3・銅1)。
中でも注目だったのは、イレイン・ブスト選手です。7日に行われた女子1500メートルで高木美帆選手を抑えて優勝。5大会連続6個目の金メダルを獲得する大偉業を成し遂げました。また、イレーネ・スハウテン選手は今大会、金メダル3個、銅メダル1個を獲得し「新たなスケートクイーン誕生」と祝福されています。
冬季五輪で圧巻の強さを見せるオランダのスピードスケートですが、負けた時でさえ「“スケート王国オランダ”の底力を感じるな」と私は思うのです。
例えば、オランダの男子は4位、女子は3位という結果になった団体パシュート。女子は銅メダルを獲りましたが、同種目への取り組みの甘さから批判を浴びています。この競技の監督に注目すると、男子で優勝したノルウェー、女子で優勝したカナダ、準優勝の日本、いずれもオランダ人が務めていました。
また、女子500メートルで金メダルを獲得した米国のエリン・ジャクソン選手にも、オランダ人が大きな影響を与えています。元々、インラインスケートの選手だったジャクソン選手。オランダに遠征した2017年、同競技のビアンカ・ローゼンボーム選手に「アイススケートを試してみない?」と誘われ、24歳にして初めてスケートリンクへ。
足を震わせながら氷の上に降り立ったジャクソン選手について、ローゼンボーム選手は「まるで子ジカのバンビのようだった」と当時を振り返ります。しかし、ジャクソン選手の能力を見抜いたローゼンボーム選手は、スピードスケートへの転向を勧め、強力にバックアップしました。1年後、ジャクソン選手は平昌五輪に出場し24位に。そして、29歳で迎えた今大会で金メダルを獲得。オランダ人の目利きのすごさに、私も驚きました。