からだ・美容
子どもに脱毛サロンは早い? 医師が教える成長期のムダ毛ケア注意点
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:辻 晋作
薄着の季節になると気になるのがムダ毛。性別を問わず、医療機関やエステサロンで脱毛をする人が多くなっています。最近は「キッズ脱毛」の広告を見かけるようになりました。思春期になると、周りの友達と比べて毛が濃いように感じると気にされるお子さんも増えてきますし、親が若い頃にムダ毛で悩んだ経験から脱毛を勧めるケースも。小中学生でも容易に美容情報が手に入る今、自己処理による肌トラブルも気になるところです。そこで、辻晋作医師が医学博士の視点から健康や美容の疑問を解説する連載4回目は、「子どもの脱毛」についてお話を伺いました。
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子どもの毛の成長サイクルは不安定 脱毛することで毛が濃くなる場合も
第二次性徴期に入ると、ホルモンの影響で体毛が目立つようになります。女子は初潮を迎える頃ですね。顔のうぶ毛が目立ってきて、脇や陰部の毛も生え始めます。しかし、成長過程においてホルモン分泌が安定していないため、毛が生まれ変わる「毛周期」も不安定。毛の量や太さにもばらつきが見られます。
毛周期に合わせて行う医療脱毛は、毛の成長サイクルが安定しないお子さんに行う場合、十分な効果を得ることができないこともあります。
医療脱毛はレーザー照射によって毛を作る毛根を破壊し、毛が生えないようにします。このレーザーは黒い色素であるメラニンに反応して熱を発生しますので、皮膚の中で眠っている毛に対しては反応しません。そのため、毛の成長サイクルに合わせて何度か行う必要があります。毛の成長サイクルが安定しない小学生、中学生のお子さんの場合は当然時間がかかります。
また、皮膚にレーザー照射をするため、どうしても痛みが生じます。医療レーザーとはいえ、火傷のリスクもゼロとはいえません。大人でも痛みに耐えるのがつらく途中でやめてしまう方もいますので、お子さんならなおさら。もちろん、お子さんに施術を行う場合は照射レベルを下げますが、その分効果も弱くなります。麻酔をするケースもありますが、そうすると痛みを感じないため火傷をするリスクも生じます。
照射レベルが低くなると、毛根を完全に焼き切ることができず、毛が太く濃くなる「硬毛化」が起こります。毛も細胞でできていますので、外部からのダメージに対して「負けられない」と、もっと太くなろうとしてしまうのです。
これは、子どもだけでなく、大人の場合も同じ。適切なレーザー照射ができないと毛根は破壊できず、もっと生やそう、太くなろうと毛が頑張ってしまい、かえって濃くなってしまいます。
レーザー照射では火傷への注意も必要 家庭用脱毛機器にもリスクが
レーザーはメラニン色素に反応します。日焼けをしやすい小中学生は毛以外の部分も熱が発生して火傷をしやすくなるので注意が必要です。
思春期のお子さんは、体の変化に驚きつつ周囲の目も気になり、それほど濃くなくても体毛に対して悩みを抱えることがあるでしょう。親御さんが気にされるケースもありますが、そこでお子さんを煽るようなことはせず、医療脱毛をするリスクをしっかりと伝えることが大切です。医師の立場からすると、毛の成長サイクルが安定せず、皮膚へのダメージも考えると小中学生のお子さんにはあまりおすすめできません。
最近は家庭用の脱毛機器も手軽に手に入るようになりました。エステサロンで行われる光脱毛を家庭用にしたものですが、これも少なからず痛みが生じます。低刺激と謳っていても、お子さんは自分で判断がなかなかできません。痛くても続けてしまうこともありますし、肌トラブルに気付かないことも。
また、家庭用はパワーが弱いものが多いため、硬毛化する場合もあります。説明書をしっかりと理解できる年齢になるまでは子ども1人では使用させず、親がしっかりと管理してあげることが大切です。
ちなみに、医療レーザーの機器は大人用、子ども用と分かれているわけではありません。資格、知識を持った医師が皮膚や毛の状態を見ながら照射レベルを調整しています。