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同じ障害があったら…ダウン症児を育てながら第2子出産 元スキー選手が明かした複雑な思い
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2019年10月に愛息「ミニっち」を迎えた俳優でタレントの美馬アンナさん。先天性形成不全のため右手首から先がないミニっちを授かった当初は、絶望や葛藤を覚えたと語ります。それでもプロ野球の千葉ロッテマリーンズで活躍する配偶者・美馬学投手とともに障害について理解を深めながら、未来に向かって歩み始めました。
子育てに奮闘しながら、我が子が秘める無限の可能性に驚かされる日常をSNSで発信する美馬さんが、さまざまなジャンルの方と障害について語る対談シリーズ。今回は元アルペンスキー日本代表で、ダウン症の長男レンくん(2歳)、先天性心疾患の次男コハクくん(3か月)の母でもある須貝未里さんと、障害がある子どもの親として思いを共有しています。
今年1月に生まれたコハクくんは誕生後すぐに心臓手術を受け、現在も入院して体の準備を整えながら、家族全員で過ごせる日を目指しています。中編の今回は、須貝さんが第2子に先天性心疾患があると知りながら決めた出産についてじっくりとお話を伺いました。
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須貝さんが明かす第2子を授かった時の率直な思い
美馬アンナさん(以下アンナ):未里さんにすごく聞きたかったことがあります。それは第2子が宿った時の率直な気持ち。2人目と考えた時、私はやはり「また同じ障害を持って生まれたらどうしよう……」という不安が浮かんでしまいます。どんなことがあっても受け入れる気持ちはあるけれど、同じように手がなく生まれてきても大丈夫と言いきれない自分もいる。恐らく未里さんも同じ思いを持っていたのではないかと思うのです。
須貝未里さん(以下未里):2人目ができたと分かった時は、ただただうれしい思いでした。でも同時に、アンナさんがおっしゃったような気持ちもあったので、絶対に出生前検査は受けようと決めていたんです。出生前検査に関して賛否があるのは承知の上ですが、それでも障害児を2人も育てるのは私には難しいなと。もし「命の選択だ」と言われても「そんなのきれいごと! 当事者ではないあなたたちには関係ない!」という気持ちでいました。
アンナ:まさに! やっぱり子育ては大変だし、きれいごとでは済まないこともたくさんある。これは体験した人にしか分からないかもしれません。
出生前検査で判明した心疾患 止まらなかった涙
未里:どんなに愛情があっても大変な現実があるのは事実。だから、出生前検査で障害があると分かったら出産は諦めようと決めていました。そうしたら検査結果はグレー。染色体異常の可能性は高くないけれど低くもない。そこで詳しく調べるために超音波検査をしたら、染色体異常ではなく心疾患が見つかったんです。もう涙が止まりませんでした。
アンナ:それはつらかったでしょうね。
未里:さらに詳しい検査をするために大きな病院に行ったのですが、その段階では中絶を考えていました。中絶のための検査・診察を受けに行ったものの、説明を聞く度に勇気がなくなってきたというか……。決断ができないと思い、夫に相談したところ、彼も同意書に名前が書けないと言うんですよね。産むことになってから出産までは、胎児心エコー検査を続けて状態を見ていました。
アンナ:なるほど。それもまた、とてもリアルなお話です。
未里:最後まで覚悟はできず、考えてはいけないことばかり考えていました。でも、今こうやって無事に生まれ、手術も成功して、毎日病院へ会いに行ってコハクの顔を見ると「やっぱり産んで良かった」と思うんですよね。この選択が正解だったのかは正直、分かりません。でも、お腹に宿った時に「やった! 楽しみ!」と思った気持ちは間違いではなかったと思います。
アンナ:出産直前にインスタグラムで「本当にこの選択が正しいのか分からないけど……」と揺れる思いを率直に綴っていたのを拝見した時、未里さんの心情を考えると、私も何とも言えない気持ちになりました。でも、今こうやって無事に生まれてきてくれて、あんな小さな体で大きな手術を耐え抜いたコハクくんの生命力の強さを感じると、少しでもネガティブな思いを持っていた自分が情けなく感じることがあります。愛しいという域を超えた、尊敬にも似た思いです。
未里:私がこういう気持ちになれたのは、長男のレンの存在が大きいんですよ。
アンナ:レンくんの存在が、ですか?
未里:はい。この子はできないことも多いし、発達も遅いですが、私を笑顔にさせてくれることが本当に多いです。2人目を出産する不安でつぶれそうになった時も、この笑顔が救ってくれた。だから、穏やかに覚悟ができたのかなと思います。アンナさんも2人目を産むとしたら、お兄ちゃんが力になってくれると思いますよ!
アンナ:こんなに小さな命が支えになってくれるのですね。
未里:思いもしませんでした。ただ、人を笑顔にできる笑顔を持っているのがこの子の才能だなと思います。そう考えると、何だかうれしくなります。