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フランス人が花を「生活必需品」と言う理由 生け花文化のある日本との違いとは
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日本において5月は、4日の「みどりの日」や第2日曜日の「母の日」などで花への注目が高まる月かもしれません。普段は花を買わないという人も生花店へ足を運ぶ機会があるのではないでしょうか。一方、ロマンチックなイメージの強いフランスの人々は、日常において花とどのように付き合っているのでしょう。フランス在住ライターの小川由紀子さんが、現地の“お花事情”をリポートします。
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ロックダウンで生花店が閉店 「生活必需品」だと非難の声が
5月1日のメーデー(世界各地で行われる労働者の祭典)は、フランスでは「スズランの日」。起源は諸説あるようですが、1560年の同日に当時のフランス国王、シャルル9世が幸運のお守りとして贈られたスズラン(フランス語で「ミュゲ」)を大変気に入り、毎年この日に宮廷のすべての女性へスズランを贈ることにしたのが始まりとのこと。
今日では友人や家族に感謝の気持ちを込め、スズランの小枝を贈り合うのが習慣になっています。フランス政府もこの風習を存続させようと、この日に限ってスズランの路上販売を無税で行うことを許可。おかげでお花屋さんだけでなく、街のあちこちで可憐な白い花束を目にします。
フランスでお花といえば2020年3月、新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウンで街中の店が閉まった時に、この国の人たちが“最も飢えたもの”の一つでもありました。
一番厳格だった最初のロックダウンでは、食品、薬、テレワークで必要な事務用品、ガソリンといった、いわゆる「生活必需品」を売る店だけが営業を許されました。しかし、人々からは「本やお花といった、心の栄養になるものは生活必需品じゃないのか!」という非難の声が。
この時、お花の業者さんが車で住宅街に乗りつけてゲリラ販売すると、近所の住人が殺到してあっという間に売り切れました。ロックダウンが終わると、「真っ先にお花を買いに行ってお部屋に飾りました」とインフルエンサーたちがSNSにこぞって投稿。その様子を見て改めてフランス人に“お花ロス”があったことを実感しました。