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闘牛は“残酷”? 伝統文化か動物愛護か…存続に揺れるスペインの今
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スペインといえば、青空やフラメンコ、陽気な人々、そして闘牛をイメージする方は多いでしょう。コロナ禍のため、闘牛は昨年まで中止されていましたが、今年から実施されることになりました。ただし、いつでもどこでも観戦できるわけではありません。スペイン・バルセロナでジャーナリストとして活躍する山本美智子さんに、現在の闘牛事情について教えていただきました。
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ダリやピカソも扱った伝統文化 バルセロナでは2011年を最後に禁止に
スペインでは昔から絵画のモチーフになっていた闘牛。宮廷画家として有名なフランシスコ・デ・ゴヤをはじめ、近代ではサルバドール・ダリやパブロ・ピカソなど多くの画家が題材として描いています。スペインを代表する映画監督のペドロ・アルモドバルも、『マタドール<闘牛士>・炎のレクイエム』(1986)でスペインの土壌を強調するために闘牛を扱い、海外でも評価を受けました。
闘牛は昔ながらの伝統的な祝祭行事と密接に関連しています。スペイン国内では、3月に行われる三大祭の一つ、バレンシアの火祭り(ファジャス)とともに闘牛シーズンがスタート。10月に行われるサラゴサのピラール祭で終わりを告げます。
そもそも「闘牛」とは、スペインの王立言語アカデミー(RAE)の定義によると「闘牛(ここでは闘牛用に飼育された牛を指す)に挑む芸術」なのだそう。ここでの「挑む」とは、「闘牛を挑発し、カポーテやケープの動きを使いながら、闘牛が向かってきたらそれを避け、最終的には技術と運を駆使して死に至らしめる」行為を指しています。
そんなシーンが「残酷」という声も上がり、闘牛シーズンにバルセロナに来ても闘牛を楽しむことはできません。過去には3つも闘牛場があったバルセロナですが、動物愛護の観点から2008年にカタルーニャ州では闘牛の禁止を決定しました。
その後、スペイン憲法裁判所はこの決定を違法とし、無効とする判決を出しましたが、依然として反発は強いまま。カタルーニャ州での闘牛は2011年を最後に行われていません。