仕事・人生
タカラジェンヌの姉を見て悔し涙 夢破れた妹がコロナ禍で見つけた新たな希望
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毎年3月30日は宝塚音楽学校(兵庫県宝塚市)の合格発表が行われる日です。夢への切符を掴めるのはたった40人という狭き門。その合否によって、少女たちの人生は大きく変わります。デリバリーアプリ「menu」広報担当の小林千花さんも、かつてはタカラジェンヌに憧れた一人。幼少期から努力を重ね、姉妹で宝塚の舞台を目指してきました。そして、姉の合格を目の当たりにする一方で、3度の不合格。夢破れた後の歩み、新たな目標を見つけた現在の充実した生活について伺いました。
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広報の傍らでモデル、ライター業
小林さんはmenu株式会社のコミュニケーション本部で広報・PRを担当しています。2020年4月にデリバリー事業を開始したmenuの業績向上を目的に、PR戦略を練る日々です。
「menuはデリバリー業界で売り上げ第3位ですが、先行する大手2社に急激に迫る勢いで成長しています。2021年には、月間利用数の増加率が最も高いアプリとして、『App Ape Award』の流行アプリ賞を受賞しています」
熱心に説明する小林さんの姿はまさに広報ウーマンですが、別の顔もあります。芸能プロダクション生島企画室に所属。雑誌「美人百花」の専属読者モデルを務め、ホテルライターとして同誌などに寄稿しています。今年1月23日に放送された日本テレビ系バラエティ番組「スクール革命」にも出演し、「おすすめの宿」を紹介しました。
「弊社では副業が認められているため、芸能活動を続けています。一昨年までは女優もしていましたが、今は区切りをつけています」
menu広報として接する中で、語り始めた別のキャリア。聞くと、小林さんは特別な環境で生まれ育っていました。
「曾祖父が丸の内ホテルを創設し、父が3代目です。私たち家族にとっては、ホテルは身近な存在であり、よく国内外のホテルに行きました」
老舗ホテル一族の「お嬢様」 タカラジェンヌに憧れ小4からレッスンの日々
老舗ホテル創業者の一族。小林さんは「お嬢様」と呼ばれてきました。そして、宝塚ファンの母親に影響され、卒園式の文集には将来の夢を「タカラジ“ャ”ンヌ」と記したそうです。
「『タカラジェンヌ』と書けなかったんです(笑)。でも、その夢はずっと変わりませんでした。いろんな習い事をさせてもらっていましたが、小学校4年生から始めたクラシックバレエがしっくりきて、中学からは歌も習い始めました。そして、宝塚受験を目指すコースに入り、平日は5時間、休日は9時間のレッスンを受けるように。学校が終わると走って帰ってレッスンを受けて、夜11時に帰宅。宿題やテスト勉強は翌朝4時に起きて取りかかっていました」
文字通り、宝塚音楽学校入試にすべてを懸ける日々でした。同じレッスンを受け、ライバル関係でもあった姉は2度目の受験で合格。小林さんは男役に憧れていましたが小柄だったことで娘役志望となり、中学3年生で受けた1回目の試験は2次までは通ったものの、最終試験には進めませんでした。
「合格倍率は年によって違いますが、私たちの頃でも25倍以上はありました。1次試験は書類審査と面接です。面接官の前で受験番号、年齢、身長、体重、受験回数などを述べる。それだけで半分以下の400人程度に絞られます。2次は実技で、歌唱(課題曲、新曲視唱=その場で渡された5度音程程度の楽譜を正確に歌う試験)、舞踊ではバレエやジャズを踊ります。そこで100人程度になり、3次(最終)は面接と健康診断になります」
2度目での合格に向け、小林さんはさらにレッスン量を増やしました。聖心女学院中等科を卒業後、日本音楽高等学校の舞台芸術コースに進学。平日5時間、休日9時間のスクールに加え、月1、2度は宝塚まで出向くようになりました。試験審査員の先生が携わるスクールで指導を受けることが目的です。
「平日は高校で歌と踊りを練習し、金曜は東京の宝塚受験スクールでレッスンを受けた後、最終の新幹線に乗って宝塚へと向かいました。そして、日曜の最終の新幹線で帰京する。または土曜の夜に宝塚から戻ってきて、日曜に東京のスクールに行くこともありました」
その努力の様をテレビ番組が密着取材。本人も「何が何でも合格する」という思いでしたが、高校1、2年生で受けた試験は最終で不合格でした。
「高校1年生で受けた2回目の試験で落ちた時は、合格発表の場で母に抱きしめられながら泣きじゃくりました。大声で『何で、何で』と言って、しばらくすると、『もう一回、頑張ろう』という闘志が湧いてきました。同じスクールからも合格者がいましたし、姉も『頑張れ』と励ましてくれました。
ただ、自分を徹底的に追い込んで受けた3回目で落ちた時は、『もう、いい。やり切った』という感情になりました。そして、父に電話で『来年は受けません。これまでの応援、ありがとうございました』と言いました。姉も『そうだね。千花の気持ちを尊重するよ』と理解してくれました」