どうぶつ
ダービー優勝から29年経過した名馬の今 32歳でも健在の姿にファン感動 「臨戦態勢」
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「余生の方が長いサラブレッドの“第2の馬生”をどうするかは大きな課題」
ウイニングチケットが暮らしているうらかわ優駿ビレッジAERUは1998年にオープン。「馬と自然とふれあえる里」というテーマを掲げ、広大な放牧場とともにホテルやレストラン、ゴルフ場などを有し、乗馬体験や各種アクティビティが楽しめる人気スポットです。同施設のスタッフによると、ウイニングチケットは2007年のGI高松宮記念で優勝したスズカフェニックス(騙・20歳)と一緒に繋養されています。
「ウイニングチケットは32歳になりましたが、まだまだ食欲は旺盛で元気いっぱいです。現役時代は激しい気性の持ち主でしたが、人間にも慣れたようで今はすっかり穏やかになりました。それでもダービー馬のオーラのようなものは感じますし、冬毛が抜けて夏毛に覆われた馬体はピカピカ。本当にすごい馬だと思います」
毎年7000頭以上ものサラブレッドが誕生しているとはいえ、その中で現役時代に好成績を残せている馬はごくわずか。さらに、ウイニングチケットのように種牡馬を経験した後、功労馬として静かに余生を過ごすことができる馬はGI優勝馬の中でもほんのひと握りです。
最近はうらかわ優駿ビレッジAERUのように功労馬を受け入れる牧場や施設も増えてきましたが、まだまだ未整備な部分が多いのも事実といわれています。
「余生の方が長いサラブレッドのセカンドキャリアをどうするかは、競馬に携わる者にとって大きな課題です。多くの馬が幸せに過ごせるようになることが理想ですが、現実的には難しい。何が正解かというのはまだ分かりません。その中で多くの人にこういう現状を知っていただきたいし、馬とふれあってほしいという思いがあります」
うらかわ優駿ビレッジAERUは、乗馬体験を通して多くの人に馬とふれあう機会を提供しています。最近は施設を訪れる人の傾向も変わってきたそうです。
「乗馬体験の来場者は以前、女性のお客様が中心でした。しかし最近は『ウマ娘』の影響も大きいのか、男性も増えています。ゲームを通じてウイニングチケットという名前を知った方からのお問い合わせもありますし、今はひ孫にあたるレイパパレという馬が大活躍している影響も大きいようです。そして何より『まだ生きているんだ!』といった声をいただくことがうれしいですね」
ウイニングチケットは当時44歳のベテランだった柴田政人騎手に初めてダービーの勝利をもたらし、大きな感動を呼びました。その栄光は色あせることなく、今でも多くのファンを魅了しています。「競馬の祭典」と呼ばれる日本ダービーを通し、競走馬の現在と未来に思いを馳せてみるのもいいかもしれません。
(Hint-Pot編集部・瀬谷 宏)