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どうぶつ

犬の出産は人間の手が必要 100回以上立ち会った訓練士が語る自家繁殖の大変さ

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:稲垣 芳人

分娩が進行するまでは隠れて待機 すぐに介助を

授乳の介助をする稲垣さん。産まれて数日は目が開いていないため、こうして時々お手伝いをする【写真:Hint-Pot編集部】
授乳の介助をする稲垣さん。産まれて数日は目が開いていないため、こうして時々お手伝いをする【写真:Hint-Pot編集部】

 出産する場所は、人の出入りが少なく、静かな場所を選んであげてください。出産が近づいてくると、母犬は産箱で巣作り行動(営巣行動)を始めます。その周りに柵やケージを立ててバスタオルで隠したり、段ボールなどで目隠しを作ってあげたりしましょう。巣作り行動が見られたら動物病院に連絡をしておくと、もしもの時に安心です。

 いよいよ出産当日、分娩目前になると母犬はウロウロと落ち着きをなくし、前足で地面を掘るなどの行動を取ります。また、トイレが近くなり、両足で踏ん張るような仕草を取ることも。人間が見ていると気が散るので、僕は毛布をかぶって横になるなどして気配を消しています。いざ娩出する段階になると母犬は鳴き声を上げるので、そこですぐに様子を見に行くのです。

 生まれてくる犬は通常、羊膜に包まれたテカテカの状態です。母犬はまず羊膜を破り、臍帯(へその緒)を噛み切ります。その後、鼻や口を舐めて羊水を取り除き、子犬の体温が下がらないよう羊膜や羊水を舐め取ります。

 もちろん、こうして教科書通りに進まないこともよくあります。人間が介助に入るのはそのためです。母犬が羊膜を破らない場合は人間の手で破って出し、アルコール消毒したハサミでへその緒を切ります。そして、タオルで拭きながら呼吸を確認します。

 生まれてきた子犬が鳴き声を上げないと大わらわです。そういう時は、鼻や気道に羊水が詰まった状態のため、子犬を振ったりして出します。僕の場合、子犬の鼻や口に直接口をつけて、鼻や気道に詰まった羊水を吸い上げ、息が吸えるようにします。それでも息をしない時はドライヤーで温めつつ、タオルで体をこすります。無事に鳴いたら母犬の元へ戻し、初乳を飲ませます。飲まない場合も無理にでも飲ませます。

 その後、母犬に胎盤を食べさせます。胎盤には栄養がたくさん詰まっていますが、食べすぎると下痢になる場合があるので、与えないブリーダーさんもいるようです。子犬が初乳にたどり着けない場合も、人間が手助けして子犬の口を母犬の乳首まで誘導し、くわえるように促します。子犬の口を母犬の乳首まで誘導し、くわえるように促します。

人間の体力、費用、知識が必要 安易な自家繁殖はNG

 1匹目が誕生すると、しばらく時間をおいて(30~60分ほど)再び陣痛がやってきます。そして、同じように分娩をします。今回のミューのお産は、午前5時47分に1匹目を出産。6時7分、6時41分、7時6分、7時22分……と続き、合わせて5匹を出産しました。

 ミューは出産経験のある子でしたが、1匹目はこれまで取り上げたどの犬よりも小さく、半分程度の大きさで生まれてきました。また、羊膜が破れて子犬だけが出てきてしまい、消毒したハサミでへその緒を切った子も。その後にへその緒をたどって胎盤などが娩出されましたが、これがもし体内に残ったままの状態になると危険なため、すぐに獣医師への連絡が必要になりました。

 このように犬の出産は人間の手が必要になることが多いため、出産予定日が近づくと、一人暮らしの僕は常に1人体制で寝ずの番をしています。出産予定日の3日前から終わるまで徹夜。そして、出産後も母体や子犬がきちんと授乳できているかを管理するため、ほぼ徹夜です。日中などに2~3時間程度仮眠できますが、しばらくの間はほとんど寝られない日々が続きます。

 さらに犬を繁殖するには、前述した通り健診代だけでなく、もしも逆子や難産になれば帝王切開の手術費用もかかります。また、犬であっても出産は命がけ。愛犬が命を落とす危険性もゼロではありません。愛犬の子どもを望む場合にはしっかりと下調べをして、家族で話し合った上で、信頼できる獣医師さんに相談してみてくださいね。

(Hint-Pot編集部)