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日本に数多く存在する「岬」 海と陸を結び付ける要所の地名に込められた意味とは?

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:日本地名研究所

襟裳岬の「岬」は陸地の海中に突き出した部分を意味する【写真:写真AC】
襟裳岬の「岬」は陸地の海中に突き出した部分を意味する【写真:写真AC】

 世界各地に存在する「岬」。海洋航路では交通の要所、陸地では絶景が望める場所として観光地になっているケースもあります。入り組んだ地形が多い日本にはさまざまな岬が存在しますが、そもそもなぜ「ミサキ」と呼ぶようになったのでしょう。40年以上も地名研究を続けている日本地名研究所(神奈川県川崎市)の協力のもと、地名の由来を深掘りする「Hint-Pot 地名探検隊」。今回はさまざまな「ミサキ」にスポットを当てます。

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「ミサキ」とは“御先”のこと 航行する船が敬意を表したことも

 神奈川県の三浦半島にある「三浦三崎(ミウラミサキ)」。しかしこれは本来、「御浦御崎」で、いつの間にか「御」の字が「三」に変化したと思われます。浦が三つあったわけでも、崎が三つあったわけでもありません。

 こうした例は全国でよくみられます。古文書を読んでいると、文字を簡略化するのは日常茶飯事。この背景には“本人たちが分かればいい”というものがあります。

「ミサキ」とは“御先”のことで、大きな神様の先駆けや使者のような存在として、先に立って働く小さな神と考えられてきました。ミサキは航海する者にとって目印として便利ですが、岩礁があり危険だったので神様がまつられています。御崎権現や明神などをまつる例は多く、航行する船は敬意を表すために帆を下げる「礼帆」をしたり、採った魚のお初を捧げたりするなどしてきました。

 北海道南部の太平洋側にある襟裳岬の「ミサキ」は「岬」の字をあてています。これは陸地の海中に突き出した部分を意味していて、山の傍らが峡になっている狭間のことです。

 ミサキの代わりに「鼻」という字を使う地名もあります。鹿児島県指宿市の薩摩半島、大分県豊後高田市の国東半島など、「長崎鼻(ナガサキバナ)」の地名は全国に8か所。「長崎」は細長い「ミサキ」でその先端が「鼻」という意味です。また、岬を「ハナ」と呼ぶところもあり、高知県では室戸岬(ムロトミサキ)を「オハナ」と親しみを込めて呼んでいます。

重ねることも多い「サダ」と「ミサキ」 実は同意語

 愛媛県西宇和郡伊方町にある佐田岬(サダミサキ)の「サダ」は“海に突出したもの”の意で、岬と同じ意味です。つまり、「サダ」と「ミサキ」は同意語で重ね語。「サダミサキ」は鹿児島県大隅半島の佐多岬(サタミサキ)など西日本でも数多く見られます。

 また「サダ」には「沙汰する」「知らせる」「先導する」などの意味もあり、鳥取県の弓ヶ浜半島にある米子市淀江町佐陀(サダ)や静岡市清水区薩○(サッタ、○はつちへんに「垂」)峠などは、その意味が込められた地名です。

 沖縄では先導することを「サダユン」「サダル」「サダレ」「サダラ」などと言います。宮古島では祖神に扮した神女たちが行列を作って山から降りてくる時、先頭に立って長い木の枝を持ち、地面を叩きながら神女の列を誘導する老婆が「サダル神」と呼ばれています。やはり「ミサキ」や「サダ」は神様との縁が深いようです。

(Hint-Pot編集部)