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身近な人が乳がんに…どう声をかける? 38歳女性が実際にうれしかった言葉とは

公開日:  /  更新日:

著者:島田 みゆ

「初期、早期で良かったね」は酷な言葉

 乳がんはサブタイプや進行具合、治療方法が違えば、状況もまったく違います。ステージが0期で、自覚症状がないのに全摘が必要になることも。またしこりのサイズが初期のステージIレベルでも、転移している可能性もあります。

 また、乳がん治療は最低でも5年、一般的に10年かかるといわれます。10年以降でも再発することがあるため、初期であってもその後は長い間、転移や再発の不安と付き合っていくことに。だからこそ、不安を抱える乳がん患者にとって「初期で良かったね」「早く見つかって良かったね」は、酷な言葉になってしまうことがあるのです。

 さらに、周りに乳がん経験のある方がいると「ホルモン療法だけなんだ! 良かったね」「いつから抗がん剤?」「乳がんは大丈夫だよ」などと言われることもあります。

 ホルモン療法だけだから楽なわけでも、乳がんだから必ず抗がん剤治療をするというわけでもありません。逆に私のように、サブタイプやステージ的に術後のホルモン療法のみになるケースが多い場合でも、最終的な病理結果で抗がん剤治療に進む場合もあります。乳がんは、生存率や予後が良いといわれますが、それも当然ながら人によるのです。

「最近、多いよね」という第一声や、病気の状況を伝えてない段階での「早く見つかって良かったね」。実際に乳がんの患者数が多いのは確かですし、できるだけ早く見つかれば良いのも事実ですが、これも場合によっては、相手に誤解や不信感を与える言葉になってしまうこともあるのです。

もし、身近な人が乳がんになったら?

まずは話を聞くことが大切(写真はイメージ)【写真:写真AC】
まずは話を聞くことが大切(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 乳がん患者の当事者である私でも、もし自分が声をかける立場になったらと考えると、どんな言葉がベストなのかは本当に難しいと思います。胸がなくなることへの思い、病気の現状、薬の副作用……そもそもの性格や価値観が違うので、きっとこの言葉が正解というものはないのでしょう。

 せっかく応援する気持ちで伝えた言葉が無責任なものとして受け止められたり、心配してかけた言葉が相手を傷付けることになったりしてしまうのは、とてももったいないこと。だからこそ、まずは話を聞いてみてほしいのです。その人の言葉を聞き、状況や相手の気持ちを知った上で出てきた素直な言葉が一番届くのではないでしょうか。

 私がうれしかったのは、「今、気づけて良かったよ」「とにかく全力で応援してる」「私たちがついてるよ」「全部うまくいくよ」など……。これ以外にもたくさんあります。「ショックすぎて泣いた」「軽々しく頑張れなんて言えないけど、早く会える日を願ってる!」「手術も治療も、頑張ってくれてありがとう」、そんな言葉も相手の顔が浮かんできてとても温かい気持ちになりました。

 もちろん、これらは私と相手との関係ありきで「うれしい」と感じた言葉なので、誰にでもプラスの言葉として当てはまるわけではありません。ですが、どんな言葉であっても、決して自分の価値観だけでなく、その人を心の底から心配している気持ちが込められていれば、何物にも代えがたいエールになるのではないかと思います。

(島田 みゆ)

島田 みゆ(しまだ・みゆ)

1983年生まれ。社会人教育関係の会社で企画編集として11年勤めたのち、旅や食分野のライター、ヨガ講師、海外ツアーコンダクターの複業フリーランスに。コロナ禍で旅行の仕事が休業状態になり、好きな旅行ができないのであればと2022年からの海外生活を見据えていた矢先、38歳で乳がんが判明。3月に右胸全摘出手術を終え、現在も治療を続けながら、自身の経験を踏まえて多くの女性の心と体を健康に役立つ発信・活動をしたいと考えている。
ツイッター:@myuu_works
note:島田みゆ | 取材ライター×ヨガ講師×海外ツアコン