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人気別荘地だけじゃない 日本全国にある「軽井沢」 地名に隠された職業や自然現象とは
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教えてくれた人:日本地名研究所
数多くの別荘が並び、最近はショッピングエリアやレストラン、カフェなども充実している軽井沢。日本屈指のリゾート地として、これからやってくる夏休みシーズンも多くの観光客が見込まれます。40年以上も地名研究を続けている日本地名研究所(神奈川県川崎市)の協力のもと、地名の由来を深掘りする「Hint-Pot 地名探検隊」は今回、日本全国に点在する「カルイザワ」に注目。一体どのような背景があるのでしょうか。
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長野県だけでなく全国に10か所以上もある「軽井沢」
「軽井沢」というと、長野県北佐久郡軽井沢町を連想する人がほとんどでしょう。江戸時代までは中山道の宿場町(軽井沢宿)として栄え、明治時代から昭和時代初期にかけて避暑地として定着。多くの別荘が建てられ、現在の発展に至っています。しかし、「軽井沢」という地名は唯一無二ではありません。実は全国に10か所以上もあるのです。
「カルイザワ」という地名は一体どのような経緯で生まれたのでしょう。長野の軽井沢については、昭和初期の民俗学者である柳田國男氏の地名研究にある「峠路の麓によく見受けられる地名で、荷を背負う意味の『かるう』という俗言からきている」という説が、一時期に大きく報じられました。中山道の難所、碓氷峠(うすいとうげ)で麓から荷を運ぶ運送人夫の「軽子(かるこ)」からきた地名とするものです。
その一方で、「涸沢(カレサワ)」や「軽石沢(カルイシサワ)」からきているという説も。涸沢というのは決して侮れない場所でした。一見して枯れたと思われる川底の下には、実は目には見えない川が流れていて、少しの降雨で水流が地表に出てきて沢や川に変貌。“涸れ谷”とも呼ばれるこうした不思議な現象が地名として伝えられているのです。各地にある軽井沢を調べてみると、川との関わりが地名につながっていることが分かります。
軽沢(カルサワ)や柄沢(カラサワ)、さらに鰈沢(カレイサワ)、嘉例川(カレイガワ)、烏川(カラスガワ)という地名も、軽井沢と同様の経緯で付けられたと考えられます。また干川や星川(ホシカワ)、水無川(ミズナシガワ)、水無瀬川(ミナセガワ)、皆瀬川(ミナセガワ)という地名も、雨が降った際に水流が表れる地域だったことが関係しているのです。
ちなみに、長野の軽井沢の由来として柳田國男氏が挙げた「軽子」が付いた地名は、東京都新宿区にもあります。有名な神楽坂の東隣にある「軽子坂」です。江戸時代、船で隅田川から神田川を上ってきた荷物は、深さ20メートル近くある堀から現在の揚場町(あげばちょう)に揚げられました。そこから高台にある幕府の蔵まで運んだのが軽子です。
中山道の難所を越えたところにあった軽井沢と江戸の軽子坂の由来が同じというのも、不思議なつながりですね。
(Hint-Pot編集部)