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治安が良いオーストラリアで日本人を襲う犯罪とは 傾向と対策を現地在住記者が解説
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オーストラリアは一般的に、欧米諸国と比較して治安が良いと言われています。それが、日本人のワーキングホリデー(ワーホリ)旅行者や留学生の渡航先として人気の高い理由にもなっているようです。しかし、実際はどうなのでしょうか? 現地在住ジャーナリストの守屋太郎さんが、同国で暮らすためのノウハウなどを解説するこの連載。今回は同国の犯罪や治安についてです。
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殺人事件被害者は先進国の中でも非常に少ない
日本のワーホリ旅行者や留学生向けの情報サイトを見ると、「オーストラリアは治安が良い」ということが盛んに喧伝されていますが、実際はどうなのでしょうか。各国によって事情が異なるので、さまざまな犯罪を網羅して比較した統計はないのですが、殺人事件に関する数字から考察してみました。
語学留学などで日本人の渡航が多い主な英語圏の先進国5か国に絞って、世界銀行が公表している「人口10万人当たりの殺人事件の被害者数」のデータを紹介しましょう。これによると、やはり一番多いのは銃犯罪が多い米国(6.5人)。次にニュージーランド(2.6人)、カナダ(2.0人)、英国(1.1人)、オーストラリア(0.9人)が続いています。主な先進諸国で構成する経済協力開発機構(OECD)加盟国では、平均4.5人です。
日本がダントツに少ない0.3人ですから、オーストラリアは日本の3倍多いというとらえ方もできます。しかし、殺人事件に関する限り、英語圏の先進国の中で最も安全であることは確かなようです。殺人事件の被害者数は1990年が2.2人、2000年が1.9人でしたが、近年は1人を下回っていて、減少傾向が続いています。
実際、筆者は国内最大の都市シドニーに30年近く住んでいますが、犯罪に巻き込まれた経験は幸い一度もありません。概ね20年ほど前までは、親しい日本人や職場の同僚がハンドバッグをひったくられたり、カフェでコーヒーを飲んでいる時にカバンを置き引きされたりといった話をよく耳にしたものです。しかし、近年はそうした話を聞くこともなくなりました。
犯罪に走る主な原因の一つは、貧困だといわれています。オーストラリアは1990年代の初めから先進国の平均を上回る高い経済成長を続け、今では世界でも指折りの富裕国に。長年の経済成長が国民一人ひとりを豊かにし、犯罪を減らす結果になったと考えられます。