からだ・美容
妊娠・出産は? 乳がん治療と未来に向き合い、卵子凍結を選ぶまで
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今年2月に乳がんが判明した38歳のライター、島田みゆさん。3月末に右胸の全摘手術を受け、現在は薬物療法中です。同世代の女性に乳がんのことを知ってほしいという思いで始めたこの連載では、さまざまな実体験を綴っています。第10回は罹患したからこそ考えた卵子凍結についてです。(監修:みやびクリニック院長 日本乳癌学会乳腺認定医 矢加部文医師 ※本記事は調べた情報や担当医の話などを基に筆者が執筆した内容を、専門医が改めて監修したものです)
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選択の連続 最低でも5年のホルモン療法
乳がん手術の術式を決めると、次は卵子凍結についての選択でした。
乳がんの抗がん剤治療やホルモン治療は、生殖機能に影響を与える可能性があり、妊よう力(妊娠するための力)が低下したり失われたりすることがあります。そのため、将来の妊娠・出産の希望に備えて、治療前にあらかじめ卵子や精子を凍結保存しておくという選択肢があるのです。初診の際、医師から「年齢的に卵子凍結について、希望があれば考えてみてくださいね」と言われ、初めて現実的に考えました。
いつかは結婚や子どもを持つことをイメージしながら、何となくこの歳まで独身。現時点で妊娠・出産といっても、相手はいないし予定もない。最低でも5年のホルモン療法を終えた時にはほぼ44歳、その時に子どもを持てる状況なのか。自分の環境も体の状態も分からないけれど、可能性は残しておきたいという気持ちが強くなりました。迷いながらも、卵子凍結までのステップ、そもそも私の卵子自体が凍結できる状態なのかなど一度話を聞いてみようと思い、乳腺外科の外来日に不妊外来(リプロダクションセンター)の受診予約を依頼しました。
タイミングが後押しに 1時間で決めた卵子凍結
その日、予約の日程調整を待っていると「今日この後、お時間あればどうですか?」とのこと。時間もあったのでさっそく受診すると「手術予定日や生理周期、今の卵子の状態から、今日から採卵の準備を始めるといいんですが……どうですか?」とまさかの打診でした。
諸々話を聞いてからのつもりが、今日の今日。血液検査をしてみて、1時間後の結果で問題がなければスタートできるとのことでした。「急ですが、1時間で考えてみてください」と、とりあえず血液検査へ。心の準備はまったくできていませんでしたが、こうしたタイミングばかりはコントロールできるものではありません。「これはきっといいタイミング! やってみよう」と即断し、卵子凍結を決めました。