からだ・美容
妊娠・出産は? 乳がん治療と未来に向き合い、卵子凍結を選ぶまで
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若年層のがん患者に向けた助成金事業がある
もう一つ大きな決め手になったのは助成金です。卵子凍結に関わる費用はすべて自費のため、体だけでなく金銭的にも大きな負担になります。
東京都では、2021年9月から「若年がん患者等生殖機能温存治療費助成事業」がスタートしています。これは、がんの治療などで生殖機能に影響が出る小児・AYA世代(満43歳未満)に対して、卵子凍結などの生殖機能温存治療や妊娠のための治療費を助成してくれるものです。各道府県等自治体にも同様の制度があり、治療の範囲、卵子凍結・体外受精などの項目によって金額は異なりますが、東京都では未受精卵の卵子凍結の場合1回30万円、最大2回まで助成されます。
○東京都の要件の一部(東京都福祉保健局ホームページより)
・満43歳未満である
・東京都内に住民登録している
・都の指定の医療機関で生殖機能の温存治療を受けている(2022年3月22日現在で20か所)
他の条件も満たしていたので、私は術前と術後で計2回実施、1回目が約28万円と2回目が約17万円(採卵数や凍結個数によって値段は変わる)で、その両方の費用を全額補助してもらえました。保管料(1年ごと2万円)についても、毎年申請すれば助成してもらえます。
実は治療よりも大変だった? 採卵までの道のり
乳がんの方の検査を一通り終えた後、手術までの治療や通院は何もなく、採卵のために連日通院をしていました。卵子を育てる注射は毎日。通院できない場合は自己注射も選べますが、これが1回約1万7000円とかなりの高額。通院なら約6000円とのことなので、私は毎日通院を選びました。
また、採卵は卵子の発育状況によるのでタイミングがとても重要です。採卵日の目安はある程度予測をつけますが、確定するのは数日前。エコーで卵子の大きさや数を確認して「これなら明後日いけますね! では明後日、午前8時50分に採卵です」といった形です。
そして肝心の採卵の処置は、腟から卵胞に針を刺して卵子を採取します。病院によって麻酔で眠っている間に採卵するところもあるそうですが、私の病院は使わない方針だったため、腟の部分にスプレータイプの麻酔を振りかけるのみ。麻酔で眠らない分、ある意味乳がんの手術より大変だったかもしれません。
ただこれも個人差、さらには医師によっても違うようです。確かに、1度目は10個と採卵数も多く予備知識もほぼなかったので、かなりの痛みと衝撃を感じ、翌日もぐったり。それが2度目は3個と少なめ、前回経験からの覚悟もあったからか「あれ、こんなもの?」と痛みも軽く、拍子抜けするほどでした。
未来は分からない、だからこそやれることはやっておきたい
私は偶然にも採卵に良いタイミングで受診でき、助成金の対象であったこと、かつ病院が東京都指定の医療機関であったことなど、すべてうまく条件が合ったので卵子凍結に踏み切ることができました。採卵は採血感覚でできる軽いものではなかったですが、「未来に向けた治療」ということが病気に向き合う気持ちそのものを前向きにしてくれました。
この先どうなるかは分からないからこそ、今できることをしておけばきっと後悔はない。そういう意味でも、卵子凍結ができて良かったと思っています。
【参考】
東京都福祉保健局ホームページ
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/iryo_hoken/gan_portal/chiryou/seishoku/josei.html
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/iryo_hoken/gan_portal/chiryou/seishoku/josei_shiteiiryoukikan.html
(島田 みゆ)