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今年は2回ある「土用の丑の日」 ウナギ以外を食べる地域や風呂にまつわる風習も

公開日:  /  更新日:

著者:鶴丸 和子

「土用の丑の日」といえばウナギのかば焼き(写真はイメージ)【写真:写真AC】
「土用の丑の日」といえばウナギのかば焼き(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 2022年の「土用の丑の日」は7月23日と8月4日の2回。ウナギは近年、高級魚となっていますが、この日だけは積極的に食べて暑さに備えたいという人も多いのでは。「土用の丑の日」にウナギを食べる風習は江戸時代半ばに広まりました。その由来やウナギ以外に食べるもの、季節湯などの習わしをご紹介しましょう。

 ◇ ◇ ◇

土用は夏だけではない 「土用の丑の日」は年によって2度ある

「土用」は立春、立夏、立秋、立冬の前の約18日間を指します。夏だけではなくそれぞれの“季節の変わり目”ですが、特に「夏の土用」と呼ばれる立秋の前は、暑さを乗り切るために「丑の日」にウナギを食べる風習が広く知られています。

「(夏の)土用の丑の日」は年によって変わり、十二支で日にちを数えるので、2度めぐってくる年もあります。2022年は7月20日に土用入りし、1度目の「一の丑」は7月23日、2度目の「二の丑」は8月4日です。

 この日にウナギを食べる風習は、江戸時代半ばからといわれています。天然ウナギは秋から冬がおいしい季節で、夏はよく売れませんでした。諸説ありますが、売れずに店が困っていた時、蘭学者の平賀源内が「本日丑の日」と看板に書くことを助言したのがきっかけだったそうです。そうして「う」の付く食べ物での食い養生を目的に、「土用の丑の日」にウナギのかば焼きを食べてスタミナをつける風習が江戸から広まっていきました。

 ちなみに、関東と関西ではウナギのさばき方が違います。それを表す言葉が「関東の背開き」と「関西の腹開き」。一般的に関東では背から開いて串に刺し、タレをつけて皮から焼いて白焼きにした後、蒸して再びタレをつけて焼きます。関西では腹側から開き、タレをつけて蒸さずに串焼きにするのです。

ウナギ以外の食べ物 虫干しや丑湯の風習も

衣類などを干してお手入れ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
衣類などを干してお手入れ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 地域によっては「う」の付く食べ物として梅干しやウリ、うどんを味わうところもあります。この頃のシジミを「土用シジミ」と呼び、身が大きく栄養素もたっぷりと含まれ、肝臓の働きを助けてくれることから、シジミ汁にして飲む地域も。またこの頃に産み落とされた卵も「土用卵」として食い養生に用いられました。

 食べ物以外の習わしには「土用の虫干し」があります。「湿気を取る」時期とされ、梅雨で湿った衣類や本、調達品などを風に当てて陰干しして、虫やカビを防ぐことです。現代では実施する地域が少なくなったかもしれませんが、1日だけ衣類の引き出しを開けておいたり、防虫剤の交換をしたり、調達品のお手入れなどをする時期と考えると良いかもしれません。

「土用の丑の日」に薬草を入れた風呂に入る風習は「丑湯」です。病気をしないおまじないとされてきました。また昔は桃に魔除けの力があると信じられ、江戸時代には夏の土用に乾燥させた桃の葉を浸して沸かした風呂に入るという「土用の桃湯」も。ほてった肌を鎮め、あせもや湿疹を防ぐといわれていたようです。

 今年は各地で梅雨明けが早く、猛暑が続く日もあり、暑い時期を長く感じます。昔から伝わる風習を上手に取り入れ、暑さを乗り切りましょう。

(鶴丸 和子)

鶴丸 和子(つるまる・かずこ)

和文化・暦研究家。留学先の英国で、社会言語・文化学を学んだのをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。
インスタグラム:tsurumarukazu