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一度は絶滅した日本のトキ 昔は珍しくない鳥だった? 全国の地名に残る“身近さ”
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教えてくれた人:日本地名研究所
日本では昔から身近な存在でしたが、美しい羽を取るための乱獲や生息環境の変化で個体数を大きく減らし、一度は絶滅してしまった日本産のトキ。実は日本各地にその存在を確かめられる地名があることをご存じでしたか? 「Hint-Pot 地名探検隊」は今回、40年以上も地名研究を続けている日本地名研究所(神奈川県川崎市)の協力のもと、「トキ」にまつわる地名をクローズアップします。
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約20年前に絶滅してしまった日本産のトキ その存在は日本各地の地名に
2003年に残念ながら絶滅してしまった日本産のトキ。新潟県佐渡市の「佐渡トキ保護センター」では国内産のトキが絶滅寸前になったことを受け、1985年から中国の協力を得て人工繁殖に取り組みました。それから15年目の1999年、中国産トキのペアから人工繁殖初の2世が誕生。その後、飼育羽数は順調に増加し、トキを自然界に戻す放鳥が2008年から現在まで続いています。
新潟県や秋田県の方言で「ドウ」「ダオ(鳥)」と呼ばれる他、「とう」という別名もあるトキはかつて全国に生息しており、珍しい鳥ではなかったそうです。むしろ、新潟県魚沼市の鳥追い歌に「おらがつち にくいとりわ ドウとサンギと コスズメ」という一節があるほど、農家などから憎まれる厄介な存在でもありました。
トキが全国に生息していたことを知る証拠として日本各地の地名があります。新潟市南区茨曽根の「道潟(どうがた)」は、トキの方言が地名になった代表的な例です。福島県には石川郡平田村に「鴇子(とうのこ)」、南会津郡南会津町に「鴇巣(どうのす)」という地名があります。
千葉県東金市にはかつて東金城、別名「鴇ヶ根(ときがね)城」というお城がありました。平安時代に編纂(へんさん)された漢和辞典「新撰字鏡」によると、「鴇」は古代に「ツキ」や「トウ」と読まれていたそうです。そのため、鴇ヶ根城は「とうがねじょう」と呼ばれた可能性が高く、この地にもトキが生息していたと考えられます。
また「時」と表記する例も少なくありません。例えば山形県では、長井市の時庭や東置賜郡川西町の時田。これらもトキの生息地だったと考えられるでしょう。
このように、日本産のトキが姿を消してしまっても、日本各地に生息していたことは地名を通して確かめられるのです。
(Hint-Pot編集部)