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全国に広がる“ツル”の地名 ほとんどが「川」に由来している理由とは
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教えてくれた人:日本地名研究所
鶴巻や鶴見、津留など、日本各地には「ツル」の付く地名が数多く存在しています。字や音の関係から鳥の飛来を想像しますが、実は多くの場合において“川”に由来があるようです。一体なぜ川なのに「ツル」という地名になっているのでしょうか。「Hint-Pot 地名探検隊」は今回、40年以上も地名研究を続ける日本地名研究所(神奈川県川崎市)の協力のもと、その理由を探ります。
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「鶴巻」や「弦巻」 地名の由来は鳥ではなく“川”
「ツル」という地名は、多くの方が鳥の鶴に由来していると考えているのではないでしょうか。確かに、北海道阿寒郡の「鶴居村」はタンチョウヅルの飛来地です。しかし、ツルの地名はほとんどの場合において「川」に由来しているとみられます。
というのも、ツルは「長く連なった」という解釈から川に沿った平地や、川の曲流が連なる様子を指していると考えられるのです。
関東で多くみられる「鶴巻」「弦巻」という地名。これらは川の渦巻きや急流があるところを指し、中小河川が流れる場所は浸水常襲地域の可能性があります。
東京都町田市を源流に稲城市の一部、神奈川県横浜市と川崎市の一部を流れる鶴見川があります。都市型の一級河川ですが、古くから洪水被害に悩まされてきました。しかし、この50年間に鶴見川流域全体を視野に数々の対策が施され、近年では洪水の不安がない町づくりが行われてきました。
一方で気になるのは、川に由来している地名に「鶴」「弦」の字が使われていること。これは単なる当て字ではありません。鶴の首や弓の弦など、「丸く曲がっているもの」を川の形に重ね合わせているのです。
ツルは「鶴」「弦」の他に、「水流」という字が当てられることもあります。水流の地名が多いのは九州南部や中部です。熊本県に629か所、宮崎県に270か所、大分県に265か所、鹿児島県に207か所も。単独地名に加え、川の上流部・中流部・下流部を意味する「上水流(カミヅル)」「中水流(ナカツル)」「下水流(シモツル)」も非常に多く見られます。
九州に水流地名が多いことはつまり、水害のリスクの高い地域が多いということでもあるのです。
全国には鳥の鶴の字を当てるツル地名がほとんどです。しかし、地名の背景にある河川との関係を知ると、違った景色が見えてくるかもしれません。
(Hint-Pot編集部)