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憧れのタワマンで引きこもり状態に 住人から白い目を向けられる母親の余計な一言

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

教えてくれた人:姉帯 裕樹

周囲の目が気になって、ひきこもりの日々に

 息子さんがランプを破損したのはロビー横のラウンジで、長時間泣きじゃくっていたこともあり多くの人が目撃していました。また、裕可里さんは買い物先のスーパーマーケットで知人に会った際にこの話題を出し、「子どものやったことなのに、怒られちゃったわ~」とうっかり話してしまったことがあったそう。その会話を住人の誰かに聞かれてしまったようで、後日、住人主体の会合で破損したランプについて議題に上がったそうです。

「その会合で、『弁償させるべき』という意見がかなり多くの方から上がったようなんです。管理会社の人は、今回の破損に関しては息子が故意ではなかったこと、そしてマンションの保険でまかなえることを説明してくれたのですが……」

 金額の大小や保険の有無は関係なく、住人の多くに「子どもを放置していた」「子どものやったことと、謝りもしなかった」と認識されてしまったようです。そのため「きちんと弁償させるべき」という意見が相次ぎました。

「あれから私たち家族を見るマンション住人たちの視線が冷たいように感じます。そのため、コロナ禍もありひたすら家にひきこもっていますね。夫はそんな私を見て『別の場所に引っ越そう。子どもがまだ小さいのに、美術品に囲まれて暮らすなんて無理があったんだよ』と言っています」

 暮らしにくさは感じつつも、まだタワマンからの引っ越しを決断できずにいる裕可里さん。「心のどこかで、もう少し寛容になってくれてもいいのにっていう気持ちが消えません」と力なく語るのでした。

共用部の美術品や家具の破損は損害賠償を請求されるケースも…

 高級物件の紹介を得意とする姉帯さんによると、セレブ御用達のタワーマンションに高級インテリアが配置されているのは珍しくないそう。そして、裕可里さんの息子さんのように「美術品や家具をうっかり壊してしまった事件は少なくない」といいます。

「今回の件でも、管理会社が住人たちに伝えていますが、ある程度のランクの高級物件は共用部分にある美術品などについて、管理者(管理組合等)が一括して損害保険に入っていることが多いです。なので、万が一住人が破損してもその範囲でまかなえることも。ただし、物件の規模や管理組合の有無によっては損害賠償を請求されることもあります。『自分のマンションは大丈夫かな?』と不安になった人は、管理会社や管理組合に確認するといいと思います」

 ただ、裕可里さんのように、管理会社との間で話がついていても住人から問題視されてしまったことは別問題。住人それぞれの考えに基づいていることもあり、変えてもらうことは難しいでしょう。「やってしまった、言ってしまった事実はなかったことにはできませんから、後は真摯な態度で謝罪の意を伝え続けるしかないのではないでしょうか」と姉帯さん。

 互いに後味の悪い結果となってしまった今回のタワマントラブル。姉帯さんの言うように、住み続ける以上は「低姿勢で謝り倒す」以外に解決策はない……かもしれません。

(和栗 恵)

姉帯 裕樹(あねたい・ひろき)

「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。