Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

からだ・美容

飲んだら泳ぐな! 飲酒後の遊泳が怖い理由 人体では何が起こる? 医師が解説

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:近藤 千種

海の安全を守るライフセーバー。飲酒をして遊泳すると迷惑をかけてしまう可能性も(写真はイメージ)【写真:写真AC】
海の安全を守るライフセーバー。飲酒をして遊泳すると迷惑をかけてしまう可能性も(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 お盆が過ぎると夏も終盤。まだまだ積極的に遊びたいと、海水浴やバーベキューを計画している人は多いでしょう。開放感からお酒を飲みながらという場面も増えがちですが、医師は「飲酒をしてからの遊泳は絶対に禁止」と警鐘を鳴らしています。飲酒をした状態で泳ぐと、人体ではどのようなことが起こるのでしょうか。ちくさ病院副院長・抗加齢医学会認定専門医の近藤千種医師が詳しく解説します。

 ◇ ◇ ◇

飲酒して溺れた場合の死亡率は飲酒していない人の2倍

 警視庁が発表した「令和3年における水難の概況」によると、昨年の水難事故発生件数は1395件、水難者は1625人(うち死者・行方不明者は744人)と、いずれも前年対比で増加しています。年齢別では、高校卒業に相当する年齢以上65歳未満の人が全体の48.7%にあたる791人、65歳以上が34.3%にあたる557人でした。

 公益財団法人 日本ライフセービング協会が2019年に全国約200か所の海水浴場で行った調査によると、溺水事故の人的要因のうち14%が飲酒によるもの。また、同調査を2012年までさかのぼると、溺れて心肺停止になった人のうち、およそ3割が飲酒をしていたそうです。

 さらに、海上保安庁の公式サイトで公開されている「遊泳中の死亡率(平成28年)」でも、「飲酒なし」の死者・行方不明者が31%なのに対し、「飲酒あり」では63%と死亡率は約2倍も高くなっています。

アルコール摂取後の運動は心臓に負担が

海の家などで飲酒できる場合もあるが、飲んだら遊泳はしないを徹底する(写真はイメージ)【写真:写真AC】
海の家などで飲酒できる場合もあるが、飲んだら遊泳はしないを徹底する(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 一体なぜ、飲酒しながらの遊泳が危険なのか。近藤先生によると、まず炎天下で飲酒をした時は脱水症状が起こりやすいそうです。

「まず、炎天下での飲酒で起こりやすいのが脱水症状です。発汗によって水分が失われているのはもちろん、アルコールには利尿作用があり、飲んだ分以上の水分が尿として排出されることが考えられます。特に定番のビールは、利尿作用が強いとされています」

 アルコールの分解には水分が必要となるため、利尿作用と相まって、知らず知らずのうちに多くの水分が体から失われているそう。その状態で飲酒を続けると、アルコール血中濃度が上昇して通常よりさらに酔いやすい状態になり、判断力が低下したり、平衡感覚が乱れて溺れやすくなったりします。

「また飲酒後に泳ぐことは心臓に負担がかかり、心臓発作を発症する危険性が。水中に入ることで交感神経の活動が抑制され迷走神経活動の亢進がおこり、そのため徐脈が誘発されたり、水圧によって心臓への負荷がかかり不整脈がおきやすくなったりします。その結果、意識を失うこともあります」

お酒に強いと過信は禁物 「飲んだら泳ぐな」を徹底しよう!

 また、負荷がかかっているのは、心臓だけではありません。

「前述した通り脱水症状に陥りやすく、血液がドロドロの状態になって、脳梗塞などを発症するリスクも跳ね上がります。海や川に入っている最中にこれらの症状が現れると大変危険です」

 若いからといって、これらのリスクは軽視できません。他にも、紫外線を浴びた体は疲れやすく、酔っていることでさらに疲労感が増します。そのため海中や水中で浮かんでいられる体力すらも喪失してしまっている場合も。また、脱水症状で足がつりやすくなり、そのまま溺れてしまう場合もあります。

 老若男女問わず、飲酒後の遊泳は大変危険な行為です。「自分はお酒に強いから大丈夫」などと過信せず、絶対にやめましょう。

(Hint-Pot編集部)

近藤 千種(こんどう・ちぐさ)

1971年生まれ、愛知県名古屋市出身。ちぐさ内科クリニック覚王山院長・抗加齢医学会認定専門医。10代からモデルとして活躍。33歳で医師を志し、その後わずか1年で帝京大学医学部に合格。医学生時代に日本スクーバ協会が主催する「ミスダイバー」コンテストで第9代準ミスダイバーを受賞し、GTレースクイーンやグラビアアイドルとして活動する。2013年に帝京大学医学部卒業、医師免許取得。現在は愛知県名古屋市内にて、ちぐさ内科クリニック覚王山院長として内科医だけでなく美容内科/美容皮膚科医としても活躍中。