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真夏でも長袖だった祖母との思い出 被爆3世が描いた漫画に反響 「心に刺さる」
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SNSで大人気のギャグ漫画家おたみさん。ツイッター(@otamiotanomi)には何と7.6万人、インスタグラム(otamiotanomi)には1万人近いフォロワーがいます。人気の秘密はもちろん軽妙なギャグ。最新シリーズの「キャバクラ先輩」では、一度も行ったことがないのにキャバクラの良さを語る男性を、愛あるツッコミ目線で描いています。しかし、8月15日の終戦記念日に公開したエッセイ漫画は、これまでとはかなり異なる内容でした。テーマは、広島で原爆を体験した祖母との幼い日の思い出。作品は話題を呼び、1.2万件の“いいね”を集めています。詳しいお話を伺いました。
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毎年夏になると思い出す 祖母との会話
おたみさんは子どもの頃、毎年夏になると広島にある祖母の家に家族で帰省していたそうです。当時、おたみさんは6歳ほど。幼かったおたみさんは、祖母が暑くてもずっと長袖を着ていることが気になって仕方がありませんでした。
しつこく「何で?」を繰り返すおたみさんに、祖母は根負けして「ほれ」と袖をまくって腕を見せてくれました。笑顔で見せる祖母の様子とは対照的に、腕には大きな火傷の痕が広がっています。
「これが原爆じゃ」
祖母の口調は決して重くありませんが、口にした内容には呆気に取られ、呆然と立ち尽くしてしまうおたみさん。その時は何も言葉を返せなかったのですが、今でも毎年この季節になると、笑顔で見せてくれた祖母を思い出します。そして、心の中で「ごめんね」と謝っているそうです。
漫画は大きな反響を呼び、ツイッター上で1.2万件の“いいね”を集めました。また、リプライ(返信)には、「こうやっておたみさんが絵に描き語ることで、おばあちゃんの伝えたかったことがおたみさんだけでなくその周りにも広がって、おばあちゃんも話して良かったって思うかなって思った」「大切な記憶を分かりやすく描いてくださりありがとうございます」「すごく刺さる漫画でした」など、感謝の声が多く寄せられています。
戦争の語り部となるのは「とても勇気のいること」
Q. 今回の漫画を描こうと思ったきっかけは?
「普段はギャグ漫画を描いているのですが、8月15日の終戦記念日にはきちんとしたものを描きたくなりました」
Q. この出来事をきっかけに、おたみさんの中で変化したことはありますか?
「戦争の話を実感としてとらえるようになりました」
Q. おばあさまから戦争の話を聞くことは他にもありましたか?
「祖母とはこの時以来、そこまで戦争の話をしていません。祖母はその後、90歳近くで亡くなりましたが、大往生だったと思います。語り部として戦争体験をお話しされる方々がいらっしゃいますが、それはとても勇気のいることです。戦争を体験した人の大部分は、悲惨すぎて記憶にフタをしているのだと思いました」
1945年の8月6日には広島に、9日には長崎に原爆が投下されてから今年で77年。被爆者の人数は今年3月末の時点で初めて12万人を下回り、平均年齢は84.53歳となりました。当時の出来事を語り部として話せる人は年々少なくなってきています。
そこでおたみさんのように、戦争の恐ろしさや悲しみを伝え聞いた人が新たな発信者となり、さまざまな形で広めていくことは、きっと今後ますます重要になっていくでしょう。語り継ぐことで、平和な日本が長く受け継がれることを祈らずにはいられません。
(Hint-Pot編集部)