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地名「網代」の“元祖”は和歌山県? 漁業に関連する場所が多数 内陸部に定着した例も
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教えてくれた人:日本地名研究所
日本各地の地名には、当然ながら由来だけでなく、どういうエリアに多く見られるかという傾向もあります。例えば「網代(アジロ)」。魚を捕る仕掛けに由来する地名のためか、やはり沿岸部が中心のようです。ただ、土地に定着した経緯を見ると、そこにはさまざまなパターンが。「Hint-Pot 地名探検隊」は今回、40年以上も地名研究を続けている日本地名研究所(神奈川県川崎市)の協力のもと、“アジロ地名”定着の背景を探ります。
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漁民の歴史や漁村…「網代」定着にはさまざまな背景が
「網代」とは、竹や杭などで川や湖、海岸の一部を囲み、魚を誘導して生け捕りにする仕掛けのこと。また、定置網の漁場や魚群が集まる場所という意味もあります。地名としても全国のさまざまな場所で定着していますが、その理由にはいくつかのパターンが考えられるでしょう。
1つ目は、和歌山県の「網代(現在の日高郡由良町網代)」に住んでいた漁民が漁法を伝えた歴史に由来するもの。静岡県の「網代(現在の熱海市網代)」は和歌山の漁民が定住した地といわれ、千葉県の「網代湾(夷隅郡御宿町)」も同様の理由で付いた地名だとされています。ちなみに、網代姓が全国で一番多いのは千葉県です。
2つ目は、漁村に由来するパターンです。例えば、大分県津久見市網代や愛媛県南宇和郡愛南町網代。どちらも古くは「網代浦」と呼ばれていました。「網代」という言葉は中世以降、養殖漁業も指すなど広く解釈されるようになり、また「浦」は村とも表記されます。つまり、「網代浦」は「漁をする村」。これらの地名は漁村にルーツがあると考えられるのです。
漁業に関係する“お金”がルーツとなっている場合も。鳥取県岩美郡岩美町網代は、漁をする際に網の所有者へ支払う“網代銭”が地名の由来になったとされています。
ここまで取り上げた土地はいずれも沿岸部にありますが、「網代」という地名が内陸部に定着しなかったわけではありません。
東京都あきる野市にも「網代」が。この地名は昔、勢子(狩猟に際し野獣を追い出したり包囲したりして一方に誘導する人)が手を組んで獲物を追い詰めた際、領主が喜んで「あじろの者」と称したことに由来するとされています。
(Hint-Pot編集部)