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「銚子」はお酒を注ぐためのもの 意味を探ると分かる“なるほど”な地名の共通点
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教えてくれた人:日本地名研究所
千葉県北東部、房総半島の東端に位置する銚子市。一般的にこの地名の由来は、太平洋に突き出た半島の形が酒器の“銚子”に似ていることだとされています。ところが、その他に存在する「銚子」の地名には、どうやら違うものもあるようです。そこには、例えば日本酒を「お銚子1本!」と注文するように、“銚子”と“徳利”を区別しなくなった流れも反映されているのだとか。「Hint-Pot 地名探検隊」は今回、そんな「チョウシ」に注目。40年以上も地名研究を続けている日本地名研究所(神奈川県川崎市)の協力のもと、この地名がある場所の特徴などを探ります。
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銚子とは水が「注がれる場所」 徳利との混同も地名に反映
千葉県銚子市といえば、銚子漁港や利根川河口の風物とともに、太平洋に面した雄大な風景を思い浮かべることができるでしょう。「銚子(チョウシ)」という地名の由来は一般的に、利根川河口の入り口が狭く中は広い地形が、酒を注ぐ“銚子”に似ているところからだとされています。
現在の“銚子”という言葉は、飲食店で日本酒を注文する時に「お銚子ください」などと使われますが、そこで使われる容器は“徳利”です。この2つは根本的に別物であり、銚子とは結婚式の三三九度などの儀式で使う長い柄の付いた酒器のこと。注ぎ口が一つの片口と二つの両口があり、道具そのものの目的はお酒を「つぐ」ことにあります。
一方で、徳利はお酒を神棚に供える“瓶子(へいし)”が変化したもの。かつては、お酒だけでなく酢やしょうゆなどの液体、または穀物を保存したり運搬したりするための「容器」でした。
つまり、銚子には「つぐ」という動詞の意味も強くあり、千葉県銚子市の場合は「利根川が太平洋に注がれる場所」だから銚子ともいえるのです。
この意味を知ると、各地にある銚子地名に合点がいきます。例えば、石川県金沢市銚子町。この地は金沢市に合併される1957(昭和32)年まで、浅川村銚子口と呼ばれていました。地名の由来は、村の位置が同地を流れる浅野川に設けられた大きな堰の付近だったからだとされています。
またこの他に、高知県土佐郡大川村大平や富山県南砺市小原には「銚子滝」が、青森県十和田市大字奥瀬字奥入瀬には「銚子大滝」があります。いずれも水が「注がれる場所」です。
しかし時代とともに、銚子と徳利という言葉はいつしか区別されることなく、どちらも同じ日本酒を飲む際の酒器を呼ぶようになりました。そのため、この混同は地名にも表れています。
北海道函館市銚子町は、徳利の形をした岩にちなんで付けられた地名だとされています。さらに、全国各地にある「銚子塚古墳」はほとんどが前方後円墳で、上から見るとちょうど徳利のように見えるので、銚子塚と呼ばれたようです。
(Hint-Pot編集部)