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「大根とニンジン」「カニと柿」は本当にNG? 正月料理で気になる食べ合わせの真相

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

おせち(写真はイメージ)【写真:写真AC】
おせち(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 おせちなどお正月の食卓を彩る食材の中には、古くから「食べ合わせが悪い」とされる組み合わせがあります。例えば大根とニンジン、カニと柿です。新年早々から悪い食べ合わせは避けたいところですが、実際はどうなのでしょうか? 栄養士の和漢歩実さんに、栄養学的な視点から“真相”を伺いました。

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おせちの「なます」でもおなじみ 生の大根とニンジンは?

「一緒に食べると消化に悪い」といった食材の食べ合わせについての通説は「合食禁」と呼ばれ、古くから伝えられてきました。中でも「ウナギに梅干し」や「スイカに天ぷら」などはよく知られているでしょう。

 お正月の料理に登場するものとしては、「大根とニンジン」や「カニと柿」などがあります。まずは「大根とニンジン」から見てみましょう。

 この食べ合わせが悪いとされるのは、生のニンジンに含まれるアスコルビン酸酸化酵素に「ビタミンCを含む他の食材と一緒に食べない方が良い」との通説があるためだと考えられます。ニンジンのアスコルビン酸酸化酵素が、大根に含まれるビタミンCを破壊するので栄養の損失があるという見方です。

 以前の見解として、ビタミンCには還元型と酸化型があり、アスコルビン酸酸化酵素は還元型のビタミンCを酸化型ビタミンCに変化させるので相性が良くない、といったものがありました。しかし近年の研究により、酸化したビタミンCは体内で再び還元されることが分かったのです。ビタミンCの体内還元から見ると、関係性はないといえるでしょう。

 ちなみに、大根とニンジンを使ったおせちの定番「紅白なます」には、調味料として酢を使います。酢はアスコルビン酸酸化酵素の働きを弱らせるので、合理的な料理とされてきました。

カニと柿は? ともに「体を冷やす食材」とも

お正月のごちそう、カニ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
お正月のごちそう、カニ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 新年を祝う食卓にカニが登場するご家庭も多いでしょう。また柿を縁起物としてお正月飾りにしたり、紅白なますに干し柿を合わせた「柿なます」を作ったりする地域もあります。しかし、「カニと柿」は食べ合わせが悪い組み合わせといわれてきました。

 その理由の一つとして考えられるのは、柿もカニも「体を冷やす食材」という伝承でしょう。2つの食材を一緒に食べることで血流が悪くなり、代謝が下がり、不調になるとみられてきました。ちなみに中国では、カニを食べる時はショウガを一緒に食べるようです。

 もう一つの理由は“距離的な問題”。カニが海のもの、柿が山のものであるため、一緒に食べようとするとどちらも鮮度が落ちて、食あたりの原因になると考えられていたことです。流通が発達した現代では、そのような心配はないでしょう。

 栄養学的に見ると、良い面もあります。カニに含まれる亜鉛には、皮膚や髪などの健康や味覚を正常に保つ他、ビタミンAの働きを促進する効果が。また柿には、必要時に体内でビタミンAに変換されるβカロテンが含まれます。そのため、風邪が気になる寒い季節にこの2つを一緒に食べることは「食べ合わせが悪い」といえません。

 また、カニと柿の組み合わせは、食卓に毎日登場するものではありません。おせちなど新年を祝うハレの日の食卓だからこそ。せっかくですから、おいしくいただきたいですね。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾