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掃除のプロがアルカリ性洗剤の使用法に注意喚起 家庭で使うのにベストな洗剤とは

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

教えてくれた人:伊藤 まき

油汚れを落とすのに役立つアルカリ性洗剤。使う際は注意が必要(写真はイメージ)【写真:写真AC】
油汚れを落とすのに役立つアルカリ性洗剤。使う際は注意が必要(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 しつこい油汚れを落とす際に、材質や環境、肌への影響が少ない中性のものでは洗浄力が弱いことがあるかもしれません。そこで油汚れに対して効果が高い「アルカリ性」洗剤を使うケースがあり得ますが、どんな材質の汚れでも「アルカリ性洗剤を使う」のは避けましょう。掃除のプロでもある整理収納アドバイザーの伊藤まきさんが、プロの視点でお掃除の“NG”をレクチャーするこの連載。使用する材質や場所を間違えてしまうと、目も当てられない事態になることがあるようです。

 ◇ ◇ ◇

プラスチック製品はアルカリ性のものに弱い

 洗剤はpH(ペーハー)の値によって液性が分かれ、低いものから酸性、弱酸性、中性、弱アルカリ性、そしてアルカリ性となります。一般的な家庭用の洗剤はマイルドな中性のものが増えてきましたが、年末の掃除になると、頑固な油汚れやこびりつき汚れを落とすには物足りず、より洗浄力が高いアルカリ性洗剤を使用する機会もあるでしょう。

 しかし、すべての頑固な汚れ落としにアルカリ性洗剤を使用することはNGです。例えば、冷蔵庫、浴槽やバケツ、トイレの便座などプラスチックを使用した製品や場所を掃除する際、どんなに汚れていたとしてもアルカリ性洗剤の使用はやめた方が良いでしょう。

 特にポリカーボネート製のものは、アルカリにより加水分解が加速するため、あっという間に劣化してしまいます。その他のプラスチックも、ポリカーボネートほどではないにしてもダメージがあり、そのままアルカリ性洗剤を使い続けてしまうとひび割れの原因になることがあります。

 また掃除に使う際、アルカリ性洗剤を空きペットボトルに小分けにし、持ち運びが楽なようにする方もいらっしゃるようですが、これも危険な行為なので要注意。そのまま放置することはせず、残った洗剤は必ず元の容器に戻して保管しましょう。

過去には地下鉄内で“爆発”する事故も

 10年ほど前の話になりますが、地下鉄の中で業務用アルカリ性洗剤の入ったアルミ缶が破裂し、16人もの乗客が怪我をするという事故が起きました。これは、飲み終えたコーヒー缶に業務用アルカリ性洗剤を入れて持ち歩いた結果、洗剤とアルミ缶が化学反応を起こして水素が発生してしまったために起こった事故です。

 プロが使用する強力な業務用洗剤は、確かに汚れ落ちがよく頼もしいものですが、それだけ扱いには慎重を期す必要があります。ネットで安易に買えるようになってはいますが、家庭で使うのであれば弱アルカリ性くらいがマスト。扱いやすい洗剤を使用するようにすれば、不安はないと思います。

(和栗 恵)

伊藤 まき(いとう・まき)

整理収納アドバイザー1級、クリンネスト2級。ホテル清掃員や国鉄系レストランの厨房、内装会社、デパートの搬入搬出などで経験を積み、出版社に入社したのち独立。掃除しながら片づける「整理収納のプロフェッショナル」として各種ウェブメディアで記事を手がけ、掃除本の編集ライターとしても活躍中。
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