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「優等生でまさに王子」 元G1優勝馬ヒルノダムールの今 従順な性格は健在
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惜敗を糧にG1馬に登り詰めた一頭です。2011年天皇賞・春を勝ったヒルノダムール(牡15歳)は、G1で惜敗が続きましたが、やっと手が届きました。現役時代から乗り手に従順なタイプ。おとなしく調教メニューを消化し、レースに行ってラストスパートの合図を受ければすぐに加速しました。マラソンレースとも称されるJRAのG1、最長距離の3200メートルで行われる天皇賞・春を制したのは必然だったのかもしれません。「Yogiboヴェルサイユリゾートファーム」(北海道日高町)で過ごしている現在について、岩崎崇文さんに伺いました。
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ちょっと地味だけど注目度は高い! 問題行動ゼロのヒルノダムール
12月に入り、一気に寒くなりました。北海道での本格的な寒さはまだまだこれからです。12月10日に公式ツイッター(@Versailles_Farm)にアップされた動画のヒルノダムールは、白い息を吐きながら放牧を待っていました。再生数は1.5万回超。同ファームにいるアドマイヤジャパン、タニノギムレットなどに比較するとちょっと地味な存在ですが、注目度は低くはありません。
岩崎さんはダムールの様子について「まったく特徴がない」と笑いながら明かしてくれました。
「周りの馬(ジャパンやギムレット)のエッジが効きすぎていて、特徴がない。優等生で、まさに王子様。牧柵を壊したこともないし、何の問題も起こしません。1頭での放牧ということもあり、トラブルもなし。気性的にうるさいわけでもなく、学級委員タイプですね」
午前6時過ぎには放牧に飛び出して、馬房に戻るのは午後4時頃というルーティンです。キャラクターとしてはちょっと薄いですが、優等生だけに、この時期に貴重な生牧草もちらほら届くそうです。
自我を出しすぎない性格と従順さでG1馬に
現役時代は、伝統の天皇賞・春を勝っています。それまでの道のりは楽ではありませんでした。2009年、2歳の12月には登竜門ともいわれるラジオNIKKEI杯で4着と健闘。重賞タイトルもすぐかと思われましたが、2010年の皐月賞2着、東京優駿(日本ダービー)は9着、夏の札幌記念は4着、菊花賞7着、鳴尾記念2着とどうしてもタイトルに手が届きません。
2011年の重賞戦線で2着、3着になり、4月の産経大阪杯を勝つと、5月の天皇賞・春でついに戴冠。競走馬にしては穏やかな気性が、最後の爆発力の不足につながったのかもしれません。一方で、国内最長距離G1の天皇賞・春を勝てたのは、自我を出しすぎない性格ゆえジョッキーの指示に従順になれたからかもしれません。すべてのレースで手綱を取った藤田伸二騎手は「この馬をG1馬にしてあげられたことがうれしい」と感慨に浸りました。
その年の秋にはフランスにも遠征。9月のフォワ賞で2着と好走すると、10月に行われる世界一決定戦・凱旋門賞にも挑戦。10着に終わりましたが、健闘しました。
岩崎さんは「ギムレットやジャパンに押されて、何が悪いのか影が薄いんです。でも幸せな日々は送っています」と笑みを浮かべます。実はすごい実績があるのに、それを表に出さず振る舞う奥ゆかしさがあるのかもしれません。
Yogiboヴェルサイユリゾートファームを訪ねる際は、アドマイヤジャパン、タニノギムレットなどだけでなく、ぜひともヒルノダムールにも声をかけてあげてください。
(Hint-Pot編集部)