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部屋の中に女性が…タワマン居住男性を襲ったトラブル 賃貸のカギ交換はオーナー次第!?

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

教えてくれた人:姉帯 裕樹

恐怖…誰もいないはずの家に誰かいる!?(写真はイメージ)【写真:写真AC】
恐怖…誰もいないはずの家に誰かいる!?(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 思いもよらない出来事が起こるのが人生ですが、もしも帰宅した家の中に知らない人がいたら……? 今回は、居住するタワーマンションでそんな恐ろしい出来事に遭遇してしまったという男性のお話です。一体なぜそんなトラブルが発生したのか? その理由を解く“カギ”は文字通り“カギ”にあるようです。東京・中目黒で「コレカライフ不動産」を営む不動産のプロ、姉帯裕樹さんのアドバイスとともにお届けします。

 ◇ ◇ ◇

寝に帰るだけの部屋に入ったら…なぜか電気がついている!?

 誰もいないはずの部屋に長い髪の女性が……まるでホラー小説のような恐怖体験を語ってくれたのは、都内でIT関係の営業職として働く林田正路さん(仮名・34歳)。仕事で深夜帰宅が多く、少しでも会社の近くに住みたいという理由から、2年ほど前、タワマン中層階の1LDKに引っ越しました。

 基本的に部屋は「寝に帰るだけ」のため、家具などは最低限。ベッドだけは正路さんなりのこだわりで、広くゆったりとしたダブルベッドを購入しました。正路さんいわく「男の部屋にありがちな、黒と白を基調にしただけのシンプルなインテリア」だそうです。

「問題なく暮らし始めたのですが、2~3週間経った頃だったかな。部屋に戻って玄関を開けると、なぜか電気がついていたんですよ」

 実は節約が趣味という正路さん。仕事に出る際には必ず、戸締りと徹底した電源オフを心がけていました。玄関は人感センサー付きのLEDライトだったので、明るいのはいつものことでしたが、リビングに至る短い廊下の電気も灯っていたため、即座に違和感を覚えたそうです。

「うわ、空き巣か!? と思ってリビングに入ると、知らない女性がソファに座ってテレビを観ていたんです。恥ずかしながら恐怖感があり、思わず大声で『誰だよお前!』と叫んでしまいました」

相手の女性が投げたキーホルダーを見て呆然

 相手の女性も正路さんの姿に驚いたようで、何やら大声を上げ始めました。そのほとんどは悲鳴や絶叫でしたが、何とか聞き取れた内容を整理すると、「彼を出せ、何でお前みたいなやつがこの部屋にいるんだ。勝手に入ってくるな」といった内容。

 そこで正路さんは「この部屋は俺が借りている。そんな男は知らない、早く出ていけ」と何度も繰り返して、女性を追い出そうとしました。しかし女性は「嘘をつくな! 彼はどこだ!」と激高し、その場を動こうとしません。「それなら警察を呼ぶ」と、正路さんがスマートフォンを取り出したところでようやく状況を理解したのか、何かを床に投げ付け、部屋から飛び出していきました。

「女性が投げたものは、ハート形のキーホルダーが付いた部屋のカギでした。それを拾って自分が持っているカギと照らし合わせてみると合致するじゃないですか。『え? あれ?』って、それからしばらく呆然としちゃいましたよ。

 落ち着いてくるとだんだん腹が立ってきたので、翌日は賃貸契約をした不動産会社にそのカギを見せて詰問。すると、たぶんその女性は、前の住人の彼女か何かで、カギを勝手に複製したのではないかという話になったんです。迷惑料として翌月の家賃を少し安くしてもらえたので、まぁ……良かったような悪かったような、不思議な感じで終わりました(笑)」

 しかし、例の女性がどうやってセキュリティをかいくぐったのかという疑問は残ります。部屋にはカギで入れますが、エントランスやエレベーターはカードキーが必要。まさか、同じ階の住人と偶然を装って一緒に入ったのでしょうか。ともあれ、それからの正路さんは、リビングにペットカメラを設置して、帰宅する際にチェックすることが日課に。

賃貸物件でカギの交換 実は義務ではない!?

 今回もアドバイスは、「コレカライフ不動産」の姉帯裕樹さんです。姉帯さんによると、賃貸物件の大家にカギを交換する義務ないのだとか。

「残念ながら大家側には、カギを交換しなければならないという義務はないんですよ。安全面でしっかりとした対策がなされているタワマンでは、カギとオートロックセキュリティが連動していて、交換自体ができないこともあります。シリンダーの交換で対応する場合もありますが、発注から届くまでの時間がかかって次の入居者に間に合わなかったり、通常の交換より高価になってしまったりすることもあります」

 お恥ずかしい話ですが筆者は、賃貸契約では安全面からもカギを交換するのが“当たり前”だと信じていました。その分のお金も、敷金と礼金に含まれているものだとばかり。

「前に使っていたカギをそのまま使うことは珍しくないんです。一番多いのが、契約時に契約者側が支払うカギ交換費で交換するパターン。次に多いのは、オーナーが交換するパターンです。また、複製が困難なディンプルキーでも安心はできません。シリアル番号さえあれば、複製できてしまうこともあるので。ただし、スペアキーを勝手に作るのはNGです。

 ましてや、退去後の部屋に無断で入って待つなんてことは、絶対にしちゃダメ! スペアキーをどうしても作成したい時はオーナーの承諾が必要。例えば、入居時に2本のカギを受け取りそのうち1本を紛失した場合、まずは必ずオーナーや不動産屋に連絡し、どうすればいいか指示を仰いでください。承諾を得て合カギを作ることになっても、退去時にすべて返却します」

 スペアキーの禁止については、賃貸契約書に書かれていることがほとんど。また、元賃貸などの中古物件を購入した場合、それまで合カギが作られていないと断言することは難しいでしょう。

(和栗 恵)

姉帯 裕樹(あねたい・ひろき)

「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。