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仕事・人生

不登校や適応障害を乗り越え年収700万円 女性ライターが実践する「ひとり会議」とは

公開日:  /  更新日:

著者:倉野 武

「ひとり起業家」として活躍中の山口恵理香さん【写真提供:山口恵理香/撮影:臼井みちる】
「ひとり起業家」として活躍中の山口恵理香さん【写真提供:山口恵理香/撮影:臼井みちる】

 不登校、適応障害などを乗り越え、「ひとり起業家」として活躍している山口恵理香さんが2冊目の著書『あなたらしく生きるための「ひとり会議」ノート』(徳間書店刊)を刊行しました。「ひとり会議」とは、自身の悩みや課題などの答えを紙に書き出し、心の中を整理整頓するメソッドのこと。自分と向き合い「なりたい未来に一歩近づける」ステップとして、本書ではご自身の経験を交えつつ、ノウハウや効用などを綴っています。「書くことは生きること」であり、「つらいことがあった時に、乗り越える術として知っていただけたら」と語る山口さんにお話を伺いました。

 ◇ ◇ ◇

不登校から夢を実現 立役者は紙とペンだけの「ひとり会議」

 山口さんは中学時代に不登校となり、さらに適応障害と診断され、長くつらい日々を過ごしました。そんな中、“誰にもぶつけられない感情”を紙に書くことで支えられてきたそうです。やがて大学に進学し、卒業後は紆余曲折を経てウェブライターとして始動。「ライターで年収700万円を達成し、30歳までに書籍を出版」という夢に向かって邁進します。

 数年後、美容・恋愛などをテーマに月300本もの記事を執筆するウェブライターとして活躍し、年収700万円の目標を達成。さらに28歳だった2019年には『不登校だった私が売れっ子Webライターになれた仕事術』(自由国民社刊)を刊行し、夢を実現させました。この夢の実現に一役買ったのが「ひとり会議」だそうです。

「人生は山あり谷ありだと思いますが、その谷になった時にどういう風に目の前の壁を乗り越えていくのか。人に相談するより、自分と向き合った方が遠回りのようで近道だと思っていて、その時に活躍してくれるのが『ひとり会議』なんです」

 それはどのようなものなのか、本書から紹介しましょう。必要なのは紙とペンだけ。まず、自分に対する疑問、悩み、課題、改めたい習慣といった“モヤモヤの芽”などを「議題」として、自分自身への質問を用意します。心の中でその質問内容を問いかけながら、頭に浮かんだ答えを紙に書き出すのです。

 例えば「私の天職って何だろう?」という議題なら――。

→「日記や手紙、書くことが昔から好き」
→「書くことを仕事にしてみたらどうかな?」
→「最初は今の職業を続けながら副業で始めてみる」
→「いつから始める?」
→「来月の自分の誕生日までには1つ案件に応募してみる」
→「書くお仕事ってどれだけ種類があるんだろう? 調べてみよう」

 ……というように、思いついたアイデアを書き出します。

 会議にかける時間は、人や状況によってまちまち。山口さんは1日に1~2時間を会議に充てるそうですが、どちらかというと“質重視”で、「15分でも『ひとり会議』をしたら、暗くなっていた視界が明るくなったということもあるのです」とも書いています。

1日1~2時間を「ひとり会議」にあてるという山口さん【写真提供:山口恵理香/撮影:BOEL Inc.】
1日1~2時間を「ひとり会議」にあてるという山口さん【写真提供:山口恵理香/撮影:BOEL Inc.】

 そんな山口さんは、まず“場を整えること”から「ひとり会議」を始めるそうです。

「『ひとり会議』は自分と向き合う一方、もう一人の自分である“内神様”に相談する意味合いがあります。神様と対話をする上で場を整える、清めることは大事。自宅なら換気したり、お香を炊いたり、アロマをしたり。カフェなど外でするなら、自分の勘を大事にして席を選ぶようにします」

 本書では、「ひとり会議」の定義と効用が以下のようにさまざまな表現で紹介されています。

・あなた(自分)らしく生きるためのメソッド
・ネガティブな出来事をどうポジティブな人生へと変換するか、自分と向き合う時間
・人生を良い方向へと動かすための作戦会議
・自己肯定感の矢印をほんの少し上向きにできる
・自分の根っこを大地にしっかり張る作業
・心の御柱を太くする
・覚悟を決めるプロセス
・自分の使命、宿命が分かる
・なりたい未来に一歩近づける

「一番の効果は夢が叶うということだと思います。私自身、年収や出版という夢に挑戦して扉を開けたのは、何度も『ひとり会議』をやって『本当に自分はこれをやっていきたいんだ』という気持ちを固めることができたから」

 会議におけるルールの一つには「1回の会議で結論を探そうと焦らないでいい」というものもあります。

「例えば、私は独身ですが、結婚するのかしないのか、子どもを産むのかどうかという問題は結論を出しようがありません。タイミングやご縁、課された使命もあるので、結論を急がず、方向性や後悔のないような生き方を考えればいい」

 実は1冊目の著書を出版した後、山口さんの父親にがんが発覚し、半年後に亡くなりました。入院後、コロナ禍のため家族の面会すら制限されるつらい体験もあり、父親が亡くなった後の山口さんは「死別うつ」にもなったそうです。

 そんな状態から救ってくれたのも「ひとり会議」でした。「誰にも言えない思いを紙に託すことで乗り越えられた」と改めてその効用を実感したことで、本書の執筆を決意するに至ったそうです。

「皆さんも人生の節目やつらいことがあった時に、『ひとり会議』という術を身につけて乗り越えていってほしい。人生でつらいことがゼロということはあり得ない。それに直面した時に『ひとり会議』というものがある、自分もやって乗り越えてみようと、この本を通して知ってくださるのが一番の思いです」

 実際に反響も多く、「この本と出会えて良かった」「2022年に読んだ中で一番良かった」などの声が届いているそうです。