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タワマン管理組合の“役員ループ”から抜けられない! 50代女性住人の困惑 不動産のプロがアドバイス
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教えてくれた人:姉帯 裕樹
成功者の証、セレブの象徴、憧れの存在――なにかと華やかな印象がついて回るタワーマンション。しかし、コロナ禍の影響で生活様式が変わり、地方へ移住しても仕事ができること、また住人の高齢化などでさまざまな問題点が浮き彫りになってきています。中でも大きな問題となっているのが、「管理組合」。たとえ億単位で売買される高額な物件であったとしても、“地獄”のような現実が待っていることも……。東京・中目黒で「コレカライフ不動産」を営む不動産のプロ、姉帯裕樹さんのアドバイスとともにお届けします。
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このまま住み続けることを決意するも…引っ越したい理由
竹本彌生さん(仮名・50代)は、都内に建つタワーマンションに住んでいます。大手企業でともに働いてきた夫婦の稼ぎをコツコツと貯め、20年前に購入した部屋は高層階。
長年暮らしてきたなかで、新しいマンションへの買い替えを考えたこともありました。しかし、自分たちの年齢や結婚を控えている子どもたちへのことも考えると、このまま住み続けるほうが良いのでは? という結論に至り、引っ越しを考えずに今に至っているといいます。
「でもここ最近になって、引っ越したい、売り払いたい、そんな気持ちがムクムクと大きくなってきたんです」
そう考える理由は「理事会(管理組合)」にありました。
住み始めた頃は活気にあふれていた管理組合
住み始めた頃は、理事会への参加を希望する人も多く、活気にあふれていたそう。しかし近年、コロナ禍の影響もあってか、地方に別荘を購入して自分たちは田舎へ引っ越し、タワマンの部屋を貸し出す人が増加。そのため、理事のなり手が減少してしまい、役員を決めるのにも何週間もかかってしまう状況が続いているというのです。
「1年に1度交代することになっていたはずなのですが、同じ人が続けて何度もやらされる状況にあります。もちろん、私もその一人。ここ数年、役員をずっと続けている状態です。加えて、高齢者の世帯も増加しています。結局、渋々ながらもやらされるのは私たち50~60代の世代ばかりで……」
理事長や会計はやらなければならない仕事が多いため、とくに激しい押し付け合いになっているとのこと。昨年は理事長を決めるだけで3か月ほどかかったそうです。その間、なにか問題があっても誰が対応すれば良いか分からず、賃貸で入っている住人からは文句の声がバンバン上がってくる状態に。
「もう、地獄です。タワマンはそもそも住人の数が多いので、こんなことになるとは思いもしませんでした。まさか、理事のなり手がない未来がくるとは……と、夫ともども、ただただ驚いています」
管理組合が機能しなくなるマンションも
マンション管理組合の役員のなり手不足が、タワマンに限らず古いマンションにもよくある話だと指摘するのは、中目黒「コレカライフ不動産」の姉帯さん。不動産業に就いて20年以上のベテランです。
「役員を決めるのが難しいとのことですが、理事をしてくれる人がいるだけまだ良いほうともいえます。多くのマンションでなり手すらおらず、管理組合が機能しなくなっているんですよ」と、姉帯さんは言います。
「管理組合については、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)によって、区分所有者なら自動的に加入し、所有している人が持ち回りで理事になることが決められています。理事になるには、以前はマンションの住人であることが定められていましたが、2011年にマンション標準管理規約第35条が改正され、マンションに住んでいない区分所有者でも理事になることができるようになりました」
それでも、住人の高齢化などもありなり手は減る一方で、結果的に管理組合が機能しなくなってしまうマンションが増加しているそうです。
「彌生さんのケースは、お住まいのマンションの管理組合の方が、他の物件に住んでいても理事になれるということを知らない可能性もあります。まずは、区分所有者全員にこのままでは管理組合が機能しなくなることを通達したほうが良いと思います。そのうえで、『第三者管理方式』と呼ばれる、外部にマンション機能の維持・管理を依頼する方向も考えたほうが良いでしょう。もちろん、第三者に任せるということはそれなりのお金が発生しますので、管理費の値上げはやむを得なくなることもあるでしょう。そのあたりを住人で話し合うと良いと思います」とアドバイス。
なお、こうした問題はもちろんタワマンに限らず、またマンションの古い、新しいなどとも関係なくどこでも起こり得ると姉帯さんは指摘します。
「1K、1LDKなどシングル向けの部屋が多い場合は、投資用に購入して賃貸に出している可能性が高いため、彌生さんのマンションのような問題が起こりやすい傾向にあります。購入する際は、2LDK、3LDKといったファミリー向けの部屋が多い物件を選んだほうが問題は少ないでしょう」
(和栗 恵)
姉帯 裕樹(あねたい・ひろき)
「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。