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側弯症を発症したクジラ スペイン沖での救出劇が米国で話題 「助けてくれてありがとう」
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近年、増加傾向にある海の迷い子たち。日本でも今年1月には大阪湾へクジラが迷い込んだり、3月には山口県長門市にクジラの死骸が打ち上げられたりするなど、ニュースで目にする機会が増えています。海外でも同様の現象が発生しているようです。現地時間3月6日には、スペイン沖のバレンシア海岸付近で「網に絡まって苦しんでいるクジラを見た」という目撃情報が。地元水族館が調査を行ったところ、重度の側弯症を発症した大きなクジラが、網にかかり動けなくなっていました。
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側彎症のクジラ 外洋に帰すことはできたけれど…
クジラの調査を行ったスペインの海洋水族館「オセアノグラフィック」が3月6日に発表した内容によると、クジラの大きさは約17メートル。このクジラは明らかにほかとは違う外見をしていました。それは、ちょうど体の真ん中あたりから大きく曲がった背骨。調査を担当した生物学者の見解では、このクジラは重度の側弯症に苦しんでおり、背骨が140度の角度でゆがんでいるため、泳ぐことさえも苦労しているといいます。
側弯症とは、背骨が左右に弯曲した病気のこと。人間の場合、弯曲の大きさは、もっとも傾いている上下の背骨同士がなす角度で判断します。その角度が10度以上あれば側弯症とされ、40度以上だと手術が必要になるそうです。このクジラの角度は140度とのことで、泳ぐ際は苦痛を伴い、とても困難だと想像できます。
このクジラを特集した米紙「マイアミ・ヘラルド」によると、このクジラの脊椎が極端にゆがんでいる原因についてはわかっていないそう。2021年に学術誌「ネイチャー」に掲載された研究論文によれば、クジラは同じ哺乳類でありながら人とは異なり、自然に側弯症を発症することはないとされています。側弯症を持つ鯨類に関する報告はいくつか存在するものの、すべてのケースにおいて、船との衝突など外傷性由来という明確な原因があるそうです。
水族館は、クジラの大きさや外洋での位置関係、そして側弯症であることから、クジラの体に追跡装置を取り付けることができず調査の続行を断念したことを報告。発見された海岸付近から外洋に出るまでの数時間にわたり、苦しそうに泳ぐクジラを見届けました。しかし、クジラの状態が良くないため、今後再び戻ってくる可能性があると考えています。
クジラが泳ぐ様子を撮影した動画がフェイスブックに投稿されると、コメント欄には「助けてくれてありがとう」「救うことはできなかったけれど、海に出てくれたみんな、ありがとう」など、感謝の声が寄せられました。
(Hint-Pot編集部)