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タワマンのエレベーター問題に悩む女性 引っ越す前に確認するべきことをプロが解説
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教えてくれた人:姉帯 裕樹
眺望の良さや住環境の良さに憧れてタワーマンションに引っ越す人がいる一方、脱出を図る人も少なくないようです。その理由として「エレベーターがなかなか来なくて不便」と感じている人も。今回お話を伺ったのは、まさにこのエレベーターにより家庭不和を抱えてしまったという女性です。どのような問題が起こっているのでしょうか。アドバイスは東京・中目黒で「コレカライフ不動産」を営む不動産のプロ、姉帯裕樹さんです。
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エレベーターが問題で息子が家から出ない事態に…
6~7年ほど前、東京都内某所に建つタワーマンションに入居した早川乃彩さん(仮名・50歳)。引っ越しした経緯は、出張が多い配偶者さんがターミナル駅や飛行場へのアクセスの良さにこだわったためでした。乃彩さんと中学生だった息子さんは「住めればどこでもいい」と思っていたため、配偶者さんが見つけてきたタワマンを購入することに反対しなかったそう。しかし、タワマンでの暮らしは思っていた以上に不便で、乃彩さんは2年ほど前から引っ越しを悔やんでいるといいます。
「とにかくエレベーターが不便で……。私が住むタワマンにはエレベーターが2基しかなく、朝の移動に時間がかかるんです。このコロナ禍で宅配やネットスーパーを利用した人が増えたためか、昼間のエレベーター渋滞もひどくなってしまいました」
なるべく部屋から出ないようにする――いつしかそれが当然のことのようになっていたと乃彩さん。買い物は主にネットスーパーを利用し、足りないものは週に2度ほど出社する配偶者さんにお願いする生活を続けていました。しかし、その影響が息子さんの身に降りかかったのです。
「大学2年生になった息子が、コロナ禍でオンライン授業になり、サークル活動が規制されたこともあってか、まったく家から出なくなってしまって。『たまには体を動かしてみたら?』と言ってみたのですが……。『なんで? お母さんもずっと家にいるんだからいいでしょ。だいたいさぁ、エレベーターが全然来なくて億劫なんだよね。ちょっと忘れ物を取りに帰るだけで10分以上かかるとか、普通にあり得ないでしょ』と、耳を貸してくれませんでした」
息子さんの様子が心配になった乃彩さんが部屋を覗いてみると、そこには布団から起き上がることもなく、ゴロンと寝転がってだらだらとオンライン授業を受けている姿が。さすがに乃彩さんも「教授に対して失礼だ」と叱ったようですが、息子さんの行動が改善されることはなく、最近では部屋から出ることすら嫌がるようになってしまったそうです。
エレベーターの設置台数に明確な基準はない
なかなか厳しい状況になっている乃彩さんご家族ですが、そもそもエレベーターの台数など、規定されていることはないのでしょうか。中目黒「コレカライフ不動産」の姉帯さんに伺いました。
「タワマンにおけるエレベーターは、たびたび問題視されています。しかし、『なぜ、入居前にエレベーターの数を調べなかったのか?』と言いたいですね。
300戸以上入っているタワマンに、もしも1台しかエレベーターがなかったら……想像するだけで不便ですよね。もしゴミ捨て場が同じ階にあって、ネットスーパーが利用できて、暮らすうえでの不便がなければ、僕でも引きこもってしまいそうです。
先日、某高級賃貸タワーマンションの内見に行ったのですが、同じブランドのマンションでも、一方はエレベーターの台数が多く速度も速くてとても快適でしたが、もう一方は2台しかないうえに速度が遅く、エレベーターを待つ時間がかなりのストレスになりました。
タワマンにエレベーターを外付けすることは叶わないので、こうした不便さは多少速度を上げて対応する以外、基本的に改善できません。時間に余裕を持って行動できない方や、外的要因でストレスを感じやすい方は、タワマンに住むことを諦めるか、エレベーターの台数が多く設置されている物件を選ぶべきでしょう。
エレベーターの設置台数は『物件概要』に記されていますが、ウェブサイトで閲覧できる範囲には記載されていないこともあります。購入や転居を考える際は、エレベーターの台数確認を怠らないようにしてください」
(和栗 恵)
姉帯 裕樹(あねたい・ひろき)
「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。