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防災意識が低い住民に悩むタワマンマダム 対策するべきことを不動産のプロが解説
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教えてくれた人:姉帯 裕樹
眺望が良いことなどから、人気を集めるタワーマンション。しかし、高い階に住むときは、災害時の対策が不安になることも。タワマン居住者による、災害時の協力対策は必須と言えます。そんななか、3年にわたって続いたコロナ禍で、防災訓練や避難訓練を行わないケースが増えているようです。その状況に、賃貸タワマンに住むある40代女性は不安を抱えているそう。アドバイスは東京・中目黒で「コレカライフ不動産」を営む不動産のプロ、姉帯裕樹さんです。
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2年に1度のペースで行われていた防災・避難訓練
現在、配偶者の仕事の都合で、大阪府のタワーマンションに賃貸で住んでいる神谷千夏さん(仮名・49歳)。2011年の東日本大震災を千葉県で経験しました。当時は低層マンション住まいでしたが、今も地震の恐怖が脳裏から離れないそうです。
大阪府へ引っ越したのは、今から8年ほど前のこと。地震に対する恐怖感からタワマンに住むことへの抵抗がありましたが、会社から家賃補助が出ることや立地の良さなどを考え、入居を決めました。2年に1度ではありますが、住人主体の防災・避難訓練が行われていることも入居を決めるきっかけになったといいます。
「それなのに、コロナ禍の影響でそうした訓練がなくなってしまったんです。2021年の12月頃、ある程度コロナが落ち着いていたので訓練を再開するべきでは? と理事会に対して意見を出したのですが、『あなたたちは賃貸人だから意見をする権利がない』と言われ、スルーされてしまいました」
それでも、2022年の秋になってようやく避難訓練が再開。千夏さんも参加しましたが、顔を出した住人はわずか15人ほど。100人近い人が参加していたコロナ前に比べ、格段に少なくなっていたといいます。
「こんなに防災意識のない人たちが住んでいたなんて……とあきれてしまいました。私としては、2年に1度の訓練でも少ないのでは? と思うくらいなのですが……。住人たちに参加してもらうためには、どうすればいいのでしょうか。また、防災対策としてできることや、タワマンだからこそしておくべきことがあれば教えてもらいたいです」
高層マンションに住む際の防災意識 プロの見解は?
高層マンションに住む際の防災意識や対策について、中目黒「コレカライフ不動産」の姉帯裕樹さんにお話を伺いました。
「日本では、はしご車が届かない高さ(31メートル)を超えるマンションには非常用エレベーターを設置し、防火区画や排煙設備、スプリンクラーを整え、常時防災に関する監視を行う中央管理室を設置することが義務付けられています。また、100メートルを超える場合は屋上に避難用ヘリポートを設置することも。
同様に、高さ31メートルを超えるマンションでは、たとえ部屋が1階にあろうとも、各家庭において防炎性能を備えたカーテンや布製ブラインド、絨毯を使用することが法律により義務付けられています。ところが、おしゃれなデザインのものが少ないことやオーダーのため価格が高くなることなどから、防炎性能基準を満たしていないものを使っている家も少なくありません。
勘違いされている方が多いのですが、『防炎』性能だからといって燃えないわけではありません。『防炎』とは火を止めるのではなく、火災が広がるのを遅らせることです。5分でも10分でも火災の広がりが抑えられれば、消防隊が到着するまで時間を稼ぐことができますし、逃げる時間を作ることもできます。『おしゃれな部屋に住む』ことと『人の命を守る』こと、どちらが大切なのかをよく考えて、ぜひ防炎物品を使用するようにしてください。
タワーマンションの高層化が進み、100メートルや200メートルを超える高さのものが増えている現在、普段からこまめに避難訓練を行っておくことは、住人同士、命を守るために必要なことです。こうした訓練を行うことで住んでいる人の意識も防災・防火に向くので、ぜひ行ってほしいものなのですが……。『面倒くさい』と参加しない人が増えているのも、現状としてあるでしょう。ただ、そうした人たちを強制的に参加させるのは難しいと思います。
どうしても不安が消えないのであれば、最寄りの消防署で火災時や震災時の対処方法を聞き、自分だけでもしっかり備えるようにするといいでしょう。もし引っ越しできるのであれば、はしご車が届く低層階に住むことをおすすめします」
(和栗 恵)
姉帯 裕樹(あねたい・ひろき)
「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。