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「指の上に海がある」 わずか3センチのサンゴ石に表現した「マイクロアトール」の世界観に感動

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

サンゴ石の中にマイクロアトールを表現したガラス作品【写真提供:増永元(@masunaga_gen)さん】
サンゴ石の中にマイクロアトールを表現したガラス作品【写真提供:増永元(@masunaga_gen)さん】

 卓越した技術と細やかな表現力で、見る人の心を震わせるミニチュア作品。ミニチュアの世界に魅了された作家たちの作品はSNSでも公開され、たびたび注目を集めています。今回ご紹介するのは、ツイッター上で4.3万件もの“いいね”を集めている、海の生き物を表現したミニチュアのガラスアートです。制作した増永元(@masunaga_gen)さんにお話を伺いました。

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小さなサンゴ石の中に海の世界を表現

 美しい海の世界をガラスのミニチュアアートで表現した増永さん。もともとは大学でウミヘビの研究をしていましたが、創作系の仕事に憧れがあり、35歳のときにガラス作家へ転向しました。ガラス作家歴は15年。これまで制作した作品は、公式ウェブサイト「彩元堂」でも公開されています。

 今回話題になった作品のテーマは「マイクロアトール(微環礁)」。マイクロアトールは、潮の満ち引きで干出してしまったサンゴの群体が、ドーナツ状に成長したものだそうです。

 増永さんは、ガラスで作ったサンゴ石をマイクロアトールに見立てて海の中の世界を表現。サンゴ石の大きさは直径3センチほどです。小さな空間に美しい海の世界を作るため、増永さんは細かいパーツをいくつも用意しました。何度も失敗を繰り返しながら、完成までにかかった期間は3週間ほどだったそうです。

「カクレクマノミがすみついているハタゴイソギンチャクという種類はものすごく触手が細かいので、それらしく再現するために何度も表現方法を変えるなど、大変苦労しました」

 試行錯誤して再現したハタゴイソギンチャクからは、海の中で静かに揺れている様子が伝わってきます。また、青色が美しいヒメジャコガイなどもガラスで表現。カクレクマノミは、ボディのオレンジと白の境目に濃い色を入れて輪郭を強調させました。さらに、海水の部分は透明ガラスだけでなくガラスの端に青色を入れるなど、細部にもこだわりが詰まっています。

 作品がツイッターに投稿されると、4.3万件もの“いいね”が。リプライ(返信)は、「きれい」「癒やされる」「海の中を覗いているみたいです!」「本物かと思った!!!」「指の上に海がある」「ずーっと眺めて世界に浸っていたい!!」「全部がガラスとは……」「素敵な作品ですね」「こんな小さなガラス細工でこのクオリティ! すごすぎます」「これはすごい! 緻密だし、素敵・かわいい! 感動です」など、称賛する声があふれています。

生き物との出会いを作品として記録

 たくさんの人を感動させた今回の作品。しかし、増永さんは当初、カクレクマノミを作品にすることには消極的だったといいます。その理由は、カクレクマノミを主人公にしたアニメ映画でした。

「映画作品の影響で、海からカクレクマノミがいなくなったのはかなりトラウマになる出来事でした。もちろん作りたいという気持ちはありましたが、過剰な人気に乗っからず、そっとしておこうと……。でも、いずれ本当にカクレクマノミたちが消えてしまうんじゃないかという心配が年々強くなったんです。僕のガラス作品は未来の人たちに向けた生物記録でもあるので、作れるときにしっかり記録しなきゃと思いました」

 思い切って制作に取りかかった、カクレクマノミが生きる海の世界は大反響。増永さんは次の制作に向けて思考をめぐらせています。

「色が出せなかったり、作り方が思いつかなかったりして、まだ手がけられていない生き物はたくさんいます。とくにヘビやカエルが大好きすぎて、まだ納得のいくものが作れていないんです。これからも、見て感動したものはどんどん作品にしたいですね」

 出会った生き物たちを作品として記録し、多くの人を魅了する増永さん。これからどんな作品を手がけていくのか、楽しみですね。

(Hint-Pot編集部)