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「こんにゃくの日」に知りたい豆知識 「黒い粒」の正体とは 栄養士に聞く

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

こんにゃく芋とこんにゃく(写真はイメージ)【写真:写真AC】
こんにゃく芋とこんにゃく(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 5月29日は「こんにゃくの日」。「こ(5)んに(2)ゃく(9)」の語呂合せから、全国こんにゃく協同組合連合会と一般財団法人日本こんにゃく協会が1989年に制定したそうです。記念日にちなみ、こんにゃくにまつわる疑問について、元家庭科教諭で栄養士の和漢歩実さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

精粉こんにゃくの場合は海藻 その理由は?

 こんにゃくは、こんにゃく芋(こんにゃく玉)と呼ばれる、サトイモ科の植物の球茎から作られる加工食品です。いつ日本に伝わったのか定かではありませんが、平安時代の辞書「和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」に「蒟蒻」という文字があり、すでに中国から伝来していたと考えられています。

 現在、日本で食べられているこんにゃくを大きく分けると、白っぽいものと黒っぽいものがあります。地域によって好まれものは異なるようですが、黒っぽいこんにゃくには黒い粒が入っています。これはいったい……?

――こんにゃくに入っている、黒いつぶつぶはなんでしょうか?

和漢さん(以下、同)「こんにゃくには、生のこんにゃく芋から作る『生芋こんにゃく』と、こんにゃく芋の粉から作る『精粉こんにゃく』のふたつがあります。生芋こんにゃくは皮ごとすりおろして作っており、黒いつぶつぶは皮です。一方、精粉こんにゃくには、アラメやヒジキなどの海藻粉末が黒い粒となって入っています」

――なぜ、精粉こんにゃくには海藻粉末が?

「黒色にするためのようです。精粉こんにゃくは、江戸時代にこんにゃくの生芋を粉にする技術が発達して、年中作られるようになりました。それまでは、こんにゃくといえば生芋こんにゃくから作っていたため、黒っぽい色のものでした。しかし、皮を除いた精粉で作るこんにゃくは白い仕上がりになります。当時、白色のこんにゃくはなじみがなく受け入れられなかったため、海藻粉末で色を付け、生芋こんにゃくに似せたのが始まりともいわれています」

――精粉こんにゃくの見分け方などはあるのでしょうか?

「現在、スーパーマーケットなどの店頭に並んでいるものは、精粉こんにゃくが多いでしょう。粉から作られているこんにゃくは、原材料に『海藻粉末』と書かれています。パッケージなどを確認すると良いですよ」

こんにゃくは切らずにちぎると味が染み込みやすい(写真はイメージ)【写真:写真AC】
こんにゃくは切らずにちぎると味が染み込みやすい(写真はイメージ)【写真:写真AC】

――ちなみに、白いこんにゃくというと、しらたきも同じなのでしょうか?

「同じです。こんにゃくの粉に水を加えてのり状にし、水酸化カルシウムを加えて凝固させると白こんにゃくになります。細い穴に通した白こんにゃくを熱湯に入れて、細い紐状にしたものがしらたきです。白糸の滝のようであることが名の由来で、地域によっては糸こんにゃくと呼ぶこともあります」

――生芋こんにゃくと精粉こんにゃく、両者に栄養面の違いはあるのでしょうか?

「生こんにゃくのほうがやや食物繊維やミネラルが多いですが、栄養面でとくに大きな違いはないとみて良いでしょう。こんにゃくの原料は芋ですが、ほとんど水分でできているため、低カロリーと低糖質が特徴です。現在は日本の食卓だけではなく、欧米を中心に世界でこんにゃくが注目されています。また、食物繊維が豊富で食べると満腹感があり、便通も良くなるので、日々の献立にぜひ取り入れたいですね」

――こんにゃくを料理する際に、味を染み込ませるためのコツはありますか?

「包丁できれいに切らず、手やスプーンを使ってちぎると良いでしょう。ちぎると断面積が広くなるため、味が染み込みやすくなります。また、ゆでてアク抜きをしてから調理したほうが味が染み込みやすくなります」

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾