Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

ジャガイモの芽はどこまで取ったら良い? 食中毒のリスクや保存のコツを栄養士が解説

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

発芽したジャガイモ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
発芽したジャガイモ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 ジャガイモは、ポテトサラダやカレーの具材、肉じゃがなどさまざまな料理に使いやすいため、常備野菜として安いときにたくさん買っている人も多いでしょう。ジャガイモをおいしく長持ちさせるためには、芽を出させないことが肝心。しかし、暑い季節になるとあっという間に芽が出てしまうこともあります。ジャガイモの保存のコツや芽のリスクについて、元家庭科教諭で栄養士の和漢歩実さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

芽はすべて取り除くのが鉄則 食中毒の危険も

 ジャガイモは主成分がごはんと同じ糖質(でんぷん)で、主食とする国もあります。ビタミンCが熱によって壊れにくいという特徴を持ち、食物繊維やカリウムなど豊富な栄養を含むうえ、さまざまな料理に使いやすいので買い置きしておける野菜のひとつです。

 しかし、保存していたジャガイモをいざ使おうと思ったら芽が出ていたという経験もあるでしょう。また、皮が緑色に変色していたケースもあるかもしれません。

 その場合、どこまで取り除いたら良いのか迷うことも。また、暑くなるこれからの季節、発芽を遅らせるために冷蔵庫で保存する人もいるかもしれませんが、食べるには注意が必要だそうです。

――ジャガイモから芽が出てしまったら、どこまで取ったら良いでしょうか? また、気をつけることはありますか?

和漢さん(以下、同)「すべて取ります。そして、芽のみではなくそのその周辺部も取り除きましょう。また、皮にも気をつけてください。皮はビタミンやミネラルを含むので、皮ごと調理して食べたいケースもあるかもしれませんが、皮に緑色の部分があれば厚めにむきましょう。芽のほかに、緑色の皮部分にも毒性があるからです」

――どんな毒性があるのでしょうか?

「ソラニンやチャコニンと呼ばれる天然の毒素です。とくに芽の部分に多いですが、緑色の皮部分にも含まれ、また傷が付くと増えるともいわれています。ジャガイモに限らず、植物には天然の毒素を作るものが多くあり、これは虫や動物など外敵に食べられないようにするためだという説があります。これらを摂取すると、嘔吐や腹痛、下痢などの症状が出ることがあるので注意が必要です」

粉ふきイモ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
粉ふきイモ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

――ジャガイモの毒素は、ゆでたり蒸したりする調理で加熱しても減らないのでしょうか?

「減りません。ソラニンやチャコニンの毒素は170度以上で分解を始めるといわれていますが、ゆでる、蒸すなど一般的な加熱温度では、分解を始めることさえできません。したがって、取り除いて口にしないのが一番です」

――発芽を防止するために気をつけることはありますか?

「20度以上になると発芽しやすく、また光に当たると緑色に変色しやすくなります。冷蔵庫には入れず、光の当たらない涼しい場所で保存しましょう。また、涼しいところで保存していても、収穫からの期間が長くなると芽が出てくることもあります。あまり買いすぎず、必要なときに必要な分だけ購入することをおすすめします」

――暑い夏の時期は冷蔵庫に保存することもあるかもしれませんが、いかがでしょうか?

「冷蔵保存したジャガイモは糖の濃度が高まり、揚げたり炒めたりする高温調理で120度以上になると、有害物質アクリルアミドを生成するといわれています。もし冷蔵保存したジャガイモを使う場合は、煮る、蒸す、ゆでるといった調理方法で食べることをおすすめします。肉じゃが、粉ふきイモ、ポテトサラダ、みそ汁やスープの具材としていただくと良いでしょう」

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾