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【海外が見た日本人】日本人の優しさは「規格外」 海外からの旅行者が感動した“おもてなし”とは

公開日:  /  更新日:

著者:マイケル・チャーチ

道に迷った外国人記者を救ったのは…(写真はイメージ)【写真:写真AC】
道に迷った外国人記者を救ったのは…(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 海外からの旅行者から道を尋ねられたとき、あなたならどうしますか? 日本在住歴がある、元PAスポーツ通信アジア支局長で英国人記者のマイケル・チャーチさんは、スマートフォンがまだなかった20年前、日本で道に迷い「規格外の優しさ」に触れたといいます。日本を訪れたことがある外国人との会話のなかでも、チャーチさんと同じような経験をしたことがあると頻繁に耳にするそう。そんな外国人観光客たちを驚かせる、日本ならではの“おもてなし”とは。

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慣れない土地で道に迷い大ピンチ!

 私は過去に約3年間、日本に住んだことがあり、現在もプロジェクトの関係で定期的に足を運んでいます。日本での最初の長期滞在は、2002年4月からの長期出張。通信社の業務で、日韓共催のFIFAワールドカップ(W杯)の取材のために3か月間滞在しました。日本に関する美しい思い出は数え切れないほどありますが、そのときに触れた日本人の“おもてなし”は今でも忘れられません。

 5月31日の大会開幕から数週間前、大会準備状況の取材のため、新幹線で宮城県仙台市に向かいました。事前の申請やアポイントも準備万端。あとは取材対象者の目の前に座るだけという状況で、新幹線の心地良い揺れに身を預けていました。

 仙台駅での降車はその日が初めて。まだ日本語の語彙がわずかだった私は、英語と日本語版の地図をそれぞれ握りしめて、取材先に向かいました。しかし、仙台駅出発から10分も経たないうちに、自分がどこにいるのかわからず迷子になってしまいます。当時はスマートフォンがなかったため、Googleマップや通訳アプリを使うこともできませんでした。

意を決して通りすがりの日本人女性に道を尋ねると…

 この日は時間的余裕を持って、仙台駅から徒歩圏内の取材先に向かうはずでした。しかし、実際は同じブロックをグルグル回るような状況……。インタビュー時間に遅れる恐怖とパニックに心が支配されるなか、私は人生で初めて「ほかの人に行き先を尋ねる」という行動に出ました。

 私はつたない日本語で、通りすがりの年配の女性に取材先までのルートを質問。女性は私の日本語を理解し、自分の予定を変更してまで、私を目的地のビルの入り口の前まで連れていってくれたのです。

 とても優しく、丁寧にサポートしてくれたこの女性のおかげで、私は無事インタビューに間に合いました。20年経った今でも、このときに触れた日本人の“おもてなし”を忘れることはできません。

日本人の“おもてなし”は規格外

 異国で、目的地に到着できず、路上で天を仰ぐこともあるでしょう。日本を訪れた経験がある外国人との会話のなかで、「日本人は、困ったときに必ずと言っていいほど目的地まで連れていってくれる」という話題を頻繁に耳にします。

 ほかの国にも親切な方はもちろんいますが、自分の予定を一時変更してまで、わざわざ外国人を目的地まで連れていくことはあまりないかもしれません。これは、日本人たちの寛容さを感じる、感動的な一例だと思います。

 日本人の“おもてなし”に触れたのは、このときだけではありません。日本で生活していた3年の間にも、行き先にたどり着けないときに何度も目的地へ連れていってもらいました。

 スマホを手にするようになってからは、仙台での出来事のような窮地に陥ることは少なくなりましたが、海外からの来訪者に対する日本人の温かい“おもてなし”は規格外だと感じています。

(マイケル・チャーチ)

マイケル・チャーチ(まいける・ちゃーち)

キャリア30年を誇る英国人ジャーナリスト。英PAスポーツ通信のアジア支局長などを歴任し、サッカーのワールドカップ7大会連続取材。コラムニストとしても各国で活躍中。