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「梅雨の水を飲む魚」 イワシがおいしいと言われる理由

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

新鮮なイワシ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
新鮮なイワシ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 ジメジメとした梅雨の季節に、おいしさが増す食材があると言われています。そのひとつがイワシ。「梅雨の水を飲む魚」として、この時期に人気がある魚です。なぜおいしくなるのでしょうか? 由来や種類、栄養など、今さら聞けないイワシの豆知識を、元家庭科教諭で栄養士の和漢歩実さんに伺いました。

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地域によっては「入梅いわし」とも呼ぶ

 6月頃に脂がのっておいしさが増す魚を、「梅雨の水を飲む魚」と呼ぶことがあります。イサキやハモ、キスなども脂がのってきますが、代表的なのはイワシ(マイワシ)です。おいしさが増す理由は、梅雨の長雨で栄養が山から川、海に流れ出し、エサとなるプランクトンが増えることにあります。実際のところは、魚が水をごくごくと飲むわけではありません。しかし、季節の恵みを受けた環境で、たっぷりのプランクトンを食べ育った魚を、この時期ならでは旬のものとして表現しているのでしょう。

 梅雨の頃のイワシは、産卵前で脂を蓄える時期です。寒さに備えて脂を蓄える秋のイワシも人気ですが、梅雨のイワシは、一年の中でもっとも脂がのっていて、丸々と育っておいしいと言われています。とくにイワシの水揚げ量日本一を誇る千葉県の銚子では、6~7月の梅雨の時期に水揚げされるマイワシを「入梅いわし」と呼び、ブランド魚として注目されています。

 イワシは日本では古くから食べられてきました。語源については諸説ありますが、陸に揚げるとすぐに弱ってしまうため「ヨワシ」が転じて「イワシ」になったとも。また紫式部の大好物だったことから「むらさき」と呼ばれていたとの説もあります。

イワシの種類、栄養とは

イワシを梅干しと煮る(写真はイメージ)【写真:写真AC】
イワシを梅干しと煮る(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 日本でとれるイワシは、マイワシを含めて次の3種類です。それぞれの特徴を解説しましょう。

○マイワシ
 体に黒の点が7つ以上並ぶことから「七つ星」とも呼ばれます。一般的に体長10センチ前後のものは丸干しにして「めざし」などの加工品に。10センチ以上は鮮魚として店頭に並びます。

○ウルメイワシ
 目が大きく潤んで見えるのが特徴です。体が丸く、脂が少ないため、生食よりも干物として食されます。

○カタクチイワシ
 下アゴが小さく上アゴしかないように見えるのが特徴。稚魚はたたみイワシに、成魚は干物などに加工します。豊作を願ってお正月に食べる田作りや欧風料理に使われる塩辛いアンチョビの材料としてもおなじみ。

 イワシは、サバなどと同じ「青魚」です。近年、注目されるDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)のオメガ3脂肪酸が含まれています。DHAは脳の活性化に、EPAは血流を促して血管をしなやかに保つ働きが。また丈夫な骨づくりに役立つカルシウムやビタミンDも豊富です。

 近年、日本人の“魚離れ”が進んでいると言われていますが、季節限定の梅雨のイワシの味わいをぜひ楽しみたいですね。梅干しと一緒に煮付けたイワシの梅煮は、さっぱりといただけるのでおすすめです。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾