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きっかけは熊本地震で「何もできなかったもどかしさ」 気象予報士として伝えたい思い

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・出口 夏奈子

避難情報が出たらすぐに避難所へ 「まず行ってみる」ことで避難のハードルは下がる

 日本は自然災害の多い国です。四方を海で囲まれた島国だからこそ水害も多いですが、作物が育ち、木々が生い茂り、水の恵みを受けて生活ができています。重要なのは「自然災害への備え」です。

「自分の住んでいる地域にどんな災害リスクがあるのか、知っておくことが基本です。自分が住んでいる町のハザードマップを調べて、自宅の災害リスクを確認してみてください。大雨が降るときは、気象庁から注意報や警報などの情報が前もって出されます。それらを活用しながら、いち早く避難することが命を守ることにつながります」

 一番危険なのは「勘」です。地元の人だからこそ知っている、「昨年は大丈夫だった」「この前の台風と大きさは変わらない」といった、経験値からくる「勘」が避難のタイミングを遅らせてしまうと指摘します。

「『まだ大丈夫』『避難するいいタイミングがあるはずだ』って考え込んでいたら、その時点でもう避難のタイミングが遅れています。そうではなく、避難の情報が出たらすぐに避難することが大事です」

 早田さんは、最後にこんな言葉を教えてくれました。防災心理学を専門とする京都大学防災研究所・矢守克也教授の言葉だといいます。

「避難所に行って何もないことは、“空振り”ではなくて“素振り”です」

 何もなかったではなく、何もなくていい。むしろ、何もないほうがいい。避難所へ行くことで、準備不足だったと気づくこともあります。もし「避難所へ行く」という行動自体のハードルが高いのであれば、一度行ってみることでいざというときのハードルはぐっと下がるはず。ですから、まずは避難所へ行ってみることが大事だといいます。人的被害をなくすため、そうした思いを胸に、早田さんは気象予報士として活動を続けています。

◇早田蛍(はやた・ほたる)
熊本県生まれ。高校生のときに気象予報士を志すも、大学受験に失敗しフリーターに。しかし「一生やりたい仕事ってなんだろう?」と一念発起し、福岡大学経済学部に入学。1年生のときから再び、気象予報士を目指して勉強をスタートする。4年時の3月、8回目の試験でようやく合格し、見事、気象予報士の夢を実現させた。

(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)