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【海外が見た日本人】外国人記者が虜になった意外な日本食 世界一だと思う料理とは
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「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されて今年で10年になります。そんな日本が誇る和食は、訪日外国人が日本で楽しみにしていることの大定番になっています。日本在住歴がある、元PAスポーツ通信アジア支局長で英国人記者のマイケル・チャーチさんが綴るこの連載。今回は、マイケルさんが最も感動した日本食についてです。
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日本でおいしくないごはんを食べた記憶はない
日本に初めて訪れてから27年が経ちました。私は胸を張るようなグルメでもなければ、食に関する冒険心が旺盛なタイプでもないですが、食事に関して言えば、日本でおいしくないごはんを食べた記憶はありません。日本のレストランから出る際に不満な気持ちでドアを潜った思い出がないのです。
東京出張の際に焼肉や焼き鳥など、素晴らしい日本食をさまざま味わってきました。そのなかで、とくに至高の喜びをもたらしてくれるものがあります。
それはトンカツです。トンカツとの最初の出会いは1995年でした。
香港でハマった日本のカツカレー
今、住んでいる香港でも日本食に事欠くことはありません。リーズナブルな価格で、まずまずのクオリティ。香港のオフィスでは、程近くにある日系ショッピングモールの地下で昼食を済ませることが多く、そこで最も頼りになったのが大きなトンカツの乗ったカツカレーでした。
カツはビッグサイズで、ごはんとルー大盛りが定番で美味、そして大満腹でした。午後の仕事をやり抜くことを決定付ける素晴らしさで、いつでも幸せな気持ちになれたのです。
そして、若き日の大盛りライフに胃袋が徐々に耐えられなくなる頃、私の定番オーダーであるカツカレーからカレーの文字が消えていきました。そうです。私はトンカツそのものに焦点を当てることになったのです。
黒豚トンカツと衝撃的な出会い
そのきっかけは、1999年に人生で初めて鹿児島県へ出張で訪れたことでした。そして、地元・九州で育てられた黒豚トンカツの存在を、友人が教えてくれたのです。
とろけるような柔らかさとほとばしる肉汁。口に入れた瞬間、完全に別次元の世界が広がりました。今でも黒豚トンカツを頭に思い浮かべるだけで、よだれが湧いてきてしまいます。
私の胃袋を支えてくれた香港のデパ地下のトンカツとはまったく違う。そして、イタリアのミラノ風カツレツやオーストリアのシュニッツェルなど似た料理は世界ありますが、それらとも日本のトンカツはまったくの別物です。個人的には豚肉の揚げ物というジャンルにおいて、日本のトンカツこそが世界一。日本人が世界に誇る逸品だと私は思います。
日本を初めて旅行で訪れる外国人観光客の食事の目当てはまず刺身や寿司、天ぷらがメインになるでしょう。しかし。リピーターや在住経験のある外国人にとって、トンカツは間違いなく人気上位の料理だと思います。日本に出張する際に私は、トンカツは必ずスケジュールに入れています。
(マイケル・チャーチ)
マイケル・チャーチ(まいける・ちゃーち)
キャリア30年を誇る英国人ジャーナリスト。英PAスポーツ通信のアジア支局長などを歴任し、サッカーのワールドカップ7大会連続取材。コラムニストとしても各国で活躍中。