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デザインが素敵すぎる! 密かなブーム中の「御船印」って何? 御船印マスター制度も

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・出口 夏奈子

魅力は「自信を持ってかっこいいと言える」デザイン

 今年に入ってから、参加する船会社の数はさらに増えているそうです。コロナ禍による移動制限が解除され、自由に観光できるようになったことが理由のひとつですが、ほかにも考えられることがあると小林さんは言います。

「やはり“一体感が生まれた”ことが大きいと思います。船会社自体は全国にたくさんありますが、みんなで集まって何かをやるということはこれまでありませんでした。御船印をきっかけに仲間意識みたいなものが生まれて、船会社さん自身が独自に企画を立ち上げたり、同じ地域や距離を隔てた船会社さん同士が連携したユニークな企画を行ったり、みんなで一緒に船旅を盛り上げようと動き出しているのを感じます」

 たとえば昨年5月には、東海汽船(本社:東京都)と佐渡汽船(本社:新潟県)が実際に御船印のコラボ企画を実施。同じデザインながら、東側を運航する東海汽船には朝日が、西側を運航する佐渡汽船には夕日がデザインされたコラボ御船印は、そのデザインの美しさもさることながら、2枚をくっつけると1枚の絵に仕上がるという仕掛けが大きな反響を呼びました。

 日本旅客船協会には、離島航路だけでなく、湖や河川でのクルージング船を運航する船会社も加盟。御船印は日本各地の船会社・海事博物館の窓口や船内など、さまざまな場所で購入することができます。実際に乗船しないと購入できない御船印もあれば、ターミナルに行けば購入できるものもあるそうです。また、同じ船会社でも、航路によって複数の印が存在することも。種類やデザインの豊富さ、そしてなんといっても「自信を持ってかっこいいと言える」と胸を張る、集めたくなるようなデザイン性の高さが御船印の魅力です。

「御船印のデザイン自体は各船会社さんにお任せしていて自由なのですが、用紙の大きさや日付記入、第1番社などの参加社マークを必ず入れるといったいくつかのマニュアルは設けています」と話す小林さん。実際にはどんなデザインがあるのでしょうか。

「手書きのものもあれば、すべてスタンプで形作られる御船印もあります。たとえばジャンボフェリーさんは神戸~小豆島~高松で運航している船会社ですが、見開きの御船印を開くとオリーブの木が“飛び出す”仕掛けが人気です。また、昨年3月には東海汽船さんが『さるびあ丸に眠る秘密の宝』という謎解きイベントと御船印をコラボさせた企画を行いました。すべての謎を解くと特典のシールがもらえるのですが、それを貼ると御船印が完成するという仕掛けはおもしろい発想だったと思います」

マスター制度で目指せ! 「船長」の上位称号「レジェンド船長」

 さらにもうひとつ、御船印の魅力になっているのが、コレクターの収集心をくすぐる「御船印マスター制度」です。

「これは御船印の数ではなく、船会社さんの数を数えるもの。20社分の御船印を集めて申請し、認められると『一等航海士』という称号が、さらに40社分の御船印を集めて認定されると『船長』という称号が与えられるという制度です。申請書(エントリー台紙)はウェブサイトからダウンロードできますが、公式船印帳を使っていただくと申請が簡単にできるのでおすすめです」

 小林さんがおすすめする公式船印帳は、現在3種類。プロジェクトのテーマカラーでもある瑠璃色が鮮やかな「瑠璃」は、ベーシックラインの印帳として人気です。ほかには、神戸の街をモチーフにデザインした「港街/神戸」、船員の教育機関である独立行政法人海技教育機構(JMETS)とのコラボ船印帳「日本丸の壱」があります。

 御船印プロジェクトがスタートして2年。6月中旬には、お土産として便利な御船印とキーホルダーを組み合わせた「御船印キーホルダー」の第1弾を発売。またマスター制度では、「船長」のさらに上位の称号として、「船長」の称号が認定されたあと、さらに88社分の御船印を集めると得られる「レジェンド船長」も今後スタートする予定だといいます。

 青い空と青い海。今年の夏はいつもと違ってのんびりゆったりと、心地良い海風を感じながら御船印めぐりを楽しむ船旅もいいかもしれませんね。

◇小林希(こばやし・のぞみ)
東京都生まれ。大学卒業後にサイバーエージェントに入社。子会社のアメーバブックス新社にて書籍の編集に携わる。2011年末に退職。一眼レフを片手に世界旅行の旅へ。帰国後、「恋する旅女世界をゆく─29歳、会社を辞めて旅に出た」(幻冬舎刊)で旅作家へ転身。また、2014年に瀬戸内海の讃岐広島で古民家を再生する島プロジェクトを立ち上げ、「ゲストハウスひるねこ」を開業。以降、島などの活性化にも取り組む。これまでに海外65か国、国内130島以上をめぐる。その経験から多数の本を執筆。2019年に一般社団法人日本慮客船協会の船旅アンバサダーに就任し、2021年4月に立ち上がった「御船印めぐりプロジェクト事務局」のメンバーでもある。

(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)